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- 信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」前書き - ウルフ [11/26(Wed) 1:17]
信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」・前編 - ウルフ [11/26(Wed) 2:08]
信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」・後編 - ウルフ [11/26(Wed) 3:21]
信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」・後書き - ウルフ [11/26(Wed) 3:34]
Re:信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」・後書き - 伊達ルイス [12/28(Sun) 18:48]



信長の野望オンライン外伝・「ある忍びの物語」・後編
ウルフ
11/26(Wed) 3:21
正体も解らない多人数への相手へ、こちらから先
に仕掛けるのは明らかに不利である。
とりあえず、相手の出方を見るのが賢明である。
このままうまくして、同盟国の城下までたどり
着く事が出来れば、事を構えずに済む可能性も
ある。

良く勘違いされているが、忍者と言うのは、本来
はスパイであり、戦う事が目的ではない。
戦うのは最後の手段であり、誰にも見つからずに
任務を達成するのが最上である。
また、見つかってもなるべく逃げる事に尽力する
のが当然である。
どっかのゲームやマンガ・アニメみたいに、戦闘
マシーンではないのだ。

だが、相手はそうは思っていなかった様である。
並走していた影の1つから、いきなり槍の穂先
みたいな形状の物が飛んで来た。
忍者の使う手裏剣の一種、苦内である。

彼はそれを速度を緩めぬまま、前方へとんぼを
切ってかわす。
相手も彼に当てるためではなく、彼の足を止める
目的で投げたのだ。
続けて、他の影からも手裏剣が放たれる。

彼は、それらを器用に身をひねったり、不規則な
跳躍を繰り返してかわしていく。
そして、まるで体操選手の様に、前方へ跳躍しなが
ら身をひねってかわした瞬間、空中で懐から取り出
した数枚の十字手裏剣を、自分の後ろを走る影に
連続して投げつけた。

それは、狙い通り影の1つに命中して、自分を追う
集団から脱落させた。

だが、その行動で走る速度が若干鈍り、複数の影に
囲まれる結果となった。

彼は走るのをやめて立ち止まると、腰から小刀を
2本抜いてそれぞれ逆手に構えた。
どうやら、戦う覚悟を決めた様であった。

いきなり彼の背後から苦内が放たれ、不意をつかれ
た彼の背中に深々と突き刺さった・・・はずで
あった。

彼の体に命中したはずの苦内は、そのまま何も無い
空中を進んで、立木に乾いた音を立てて突き刺さっ
たのである。
これぞ、忍法「空蝉の術」である。

仕留めたと思った油断だろうか、陰の動きの止まった
その一瞬を彼は見逃さず、彼に苦内を放った影は、
その彼に斬られて地面に倒れた。

何人かの影が同時に彼に走ってせまる。彼と3人の
陰が同時に跳躍し、空中で切り結んだ。
影の1つが空中で失速して地面に落ち、もう1つの
陰が、着地と同時に倒れた。
残りの1つの影が、着地した体勢のままよろめき、
そのまま地面に突っ伏した。

残った影は2つだった。
うち1つの影が、残りの1つを守る様に前に出た。
彼と同じ様に、両手に逆手に小刀を構えている。
疾風のごとき速さで、両者は同時に相手に向かって
疾走した。
何度も切り結び、両者の間に火花が飛び散る。

彼が印を結ぶと、彼と全く同じ姿をしたものが3つ
出現した。忍法「分身の術」である。
とまどう相手に、4人の彼が同時に襲いかかる。
相手の体に深々と小刀が突き刺さった瞬間に、3つ
の分身が消滅し、後には本物の彼と倒れた相手が
残った。
これで残る相手の影は1体のみとなった。

どうやら、これが相手の「頭」らしい。

影の頭と彼は何度も切り結び、お互いの間に金属の
火花を散らす。
彼は懐から煙玉と呼ばれる物を取り出すと、自分の
足元に叩き付けた。
もうもうと白煙が立ち昇り、それが収まった時には彼
の姿は消えていた。
忍法「隠れ身」の術である。

相手は、自らの五感を研ぎ澄まし、何とか彼の所在を
突き止めようとする。
彼は、相手の隙を狙って必殺の一撃を叩き込むべく
息を潜める。
やがて、相手が茂みの中に苦内を投げた。が、そこに
彼の姿は無く、驚いて出て来たのは山鳥であった。
ばたばたと羽音を立てて飛び立つ山鳥に気を取られ
た、その一瞬で勝負は決した。
彼の小刀が背後から心臓に突き立てられる、ほんの
わずかな瞬間に、相手は自分の敗北を悟った。

こうして彼は、自分を狙う全ての敵を倒すと、その
密命を果たすべく再び走り出した。

が、彼がそのまま同盟国の城へ入る事は無かった。
彼は城の前まで来ると、そのままくるりときびすを
返して本国へと戻り始めた。
今ごろは、本物の使者が懐の密書を同盟国の大名に
届けている頃であろう。
彼が懐に忍ばせている封書の中は、実は白紙であっ
た。

彼程の手錬がおとりだとは、まさか有り得まい。
今回の彼の任務は、その考えの裏をかいたもので
あり、密書を携えた本物の使者は、堂々と関所を
抜けて、堂々と街道を通り、同盟国の城下町へと
たどり着いたのだった。

武田の忍び、伊達ルイス。
今日も彼はただ一つの影として、その密命を果たして
いる。
その命、主君の為に。また時にはかけがえの無い
仲間の為に、ただあり。
我の名は伊達ルイス、ただ一つの影なり。


       ある忍びの物語・完結



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