すべての始まりは闇にあり・・ すべての終わりは闇に帰り終わる・・・ すべての終幕の時は近く迫ってくる・・ 破滅への序曲
南のエルフ国クロアントロスは平和で温厚な国でした。 食べること、話、語り合うこと、眠ること、夜空を眺め考え込むこと 全てが楽しく、ほのかな笑いを誘いました。この国には悪い出来事や 不吉な兆しは入り込めずにいました 静かな杜のそよ風が耳を掠め、縫うように髪をさらりと靡かせ、静かに 国の平和が続くようにと漂い、王エタミアに忠誠を誓っていました 紅葉は美しく1年毎日のように花は咲き乱れ、草は靡き、紅葉は舞い 落ちました。まるで一年の好きな季節が幻の霞みのすみっこにも満たない小さな思い出になっているようでした その国で一際、賑やかなのが「宿屋 大海の波飛沫」でした エルフはあまり出入りしませんでしたが毎日のように1階の酒場からは 笑い声が聞こえました。主人のファスタムのおやっさんも人気の的でした。なにせ、白い白髪に染み一つ無い顔と金色の眼とボロボロの継ぎ接ぎの腰巻とウイスキーで汚れた服がまったく似合わないのもそのひとつです。 薄汚れたパブに男が2・3人入ってきました。フードを深深と被り 眼は赤く輝いて、狂気したようにあちらこちらにぎょろつきました 「なんだろうかおやっさん」常連のドワーフのレルカムがひっそりと聞いたが「見ない顔つきと身なりだね、最近うろついとる危なっかしい奴かもしれん、何せ見た事が無い」おやっさんは肩をすくめた 凛々しい顔には困ったような、恐ろしいような困惑の色がテカテカとしていました。フードの下からは不気味な声が囁いていました その気味悪いお客さんんにウイスキー2本を盛りにカウンターの席を立ちました。気前のいい声に手で応じながら、それはグラスをさし出しました。指は鎧で包まれ、腰から透き通ったアウインを手に差し出しました。60カラットはあるでしょうか!この重みと透き通る色は!おやっさんは思わず「ブラボー!!」と大声で叫びました。 「お待ち下さい」とすっとんきょうな大声を張り上げカウンターに小走りしていった。 他の客もレッドベリルやらサファイヤやらを数個ばらまき酒をねだりました。おやっさんはうれしくなり、てんてこ舞いでした。 フードの客もすっかりいなくなり、日は落ち、暗く紅葉が薄く輝いているだけの夜景が窓一杯に広がっていました。夜空は星が輝きテスタム(今で言う1等星)が瞼を照らしました。 上着の下からガーネットを出しつづけた客も上に上がり寝こんでいました。おやっさんはろうそくを消し、ランタンを戸棚から持ち上げ、上等なウイスキーをカウンターにいれました。 階段をほろ酔いの千鳥足で(一杯も飲んではいないが)おやっさんは 「100」と書いた部屋に入りました。 大きなベットと上等なベットに腰を下ろしました
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