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- Silent of Pioneer2 - R・イングラム [11/4(Mon) 16:01]
Silent of Pioneer2 II - Dr・キャロル [11/7(Thr) 5:13]
Silent of Pioneer2 III - ダイア [11/10(Sun) 20:02]
Silent of Pioneer2 IV - モンタマン [11/20(Wed) 1:24]
Silent of Pioneer2 V - キット [11/25(Mon) 16:06]
あとがき - Mr.X線 [11/25(Mon) 16:14]
Re:星が綺麗ね。。。(笑) - おりん [11/26(Tue) 10:19]
Re:お茶が美味しい〜わね・・・ - GUM [11/27(Wed) 9:24]



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Silent of Pioneer2
R・イングラム [HomePage] [Mail]
11/4(Mon) 16:01
R・イングラムでス。宣言通リ、小説を投稿したイと思いマスので、宜しけレバ御一読下サイ。


Silent of Pioneer2

#1 その名はサムス・アラン


「星が綺麗ね……」

 漆黒の宇宙に輝く、幾億の星々を見つめながら、一人の女が呟く。女は緑色のさらさらとした、美しい髪をたくし上げる。
 だが美しいのは頭髪だけでは無かった。英知と野生を兼ね備えた顔。その肢体も、眩しいまでのプロポーションだ。
 女ならば誰もがため息を付き、男ならば誰もが欲情するであろう、そんな女性だった。


 この物語と舞台となるのは、本星の疲弊により、全世界的移民を余儀なくされた人々が乗る、超巨大宇宙移民船「パイオニア2」。
 その先駆けとなる政府高官や、軍隊の多くが乗る「パイオニア1」が本星を出航し、長き旅路の末、人類の新たな緑の故郷となる原始惑星、「ラグオル」を発見し、移住のための開拓を進め七年の歳月が流れた。

 そして、ようやく生活環境が整ったラグオルに、本格的な移民船である、パイオニア2が到着しようとしていた。

 しかし……パイオニア2が、ラグオル上空に到達し、惑星本部と交信のためのビーム回線を開こうとした直後、原因不明の大規模爆発が、本部の地表周辺で起こった。

 この様な事態が起こるなどと、誰が予想しえようか。当然、本部との交信は途絶し、パイオニア2は未曾有の混乱に巻き込まれる。
 時の提督、タイレルは軍備の脆弱なパイオニア2で独自の捜査を開始するため、この時代、金銭によりあらゆる事件・問題を解決する人間、「ハンター」を統括する「ハンターズギルド」に、これを依頼した。

 かくして、パイオニア2に数多く乗船する、ハンターズはそれぞれの思惑のもと、ラグオルの調査を開始したのであった。
 ある者は金のため。ある者は自分が踏みしめる大地のため。そして、ある者は極秘裏の命令によって。

 その先に、何が待ち受けているとも知らずに……。


「星が綺麗ね……」

 女は再びつぶやく。彼女もまた、ハンターである。しかし、彼女には他のハンター達とは決定的に異なる役割を背負っていた。
 ハンターズギルドとは、また別に、特別な依頼により裏仕事をこなす闇の組織「タークス」。

 彼女はその組織の総元締め……つまりは、いわゆるボスであったのだ。

 普段は太陽の様に明るい笑顔と、ヒトなつこい声色が人気の彼女は、パイオニア2内・一般居住区酒場のマスターである。
 だが、一度依頼が舞い降りれば、いかなる内容であっても冷徹に遂行する豹に、早変わりする。
 ジャンヌ・アサシン――華麗なる暗殺者――、「サムス・アラン」。それが彼女の名だった……。


To be continue.
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Silent of Pioneer2 II
Dr・キャロル [HomePage] [Mail]
11/7(Thr) 5:13
二番手は私よ……薮医者って言ったらコロス。


Silent of Pioneer2

#2 Girl the fighter 


 酒場の天窓から星を見上げていたサムスが、ため息を漏らす。それまで静寂が支配していた店内に、黄色い声が響いたのは、まさにその時だった。

「にゃーん。邪魔するぜ〜〜」
「あら……いらっしゃーいな」

 サムスはそれまでの憂鬱気な表情から一変し、百万メセタの笑顔と称される微笑みで、声の主を迎える――この辺りは、彼女が商売人としての素質も多く持っている、と言う事の表れでもある――。
 店に入ってきたのは、驚くべき事に歳端も行かぬニューマンの少女だった。ニューマンとは、この時代に発達したバイオ・テクノロジーによって生み出された、強化人類の事である。

 だが、遺伝子操作や、薬物投与により人工的に造られたニューマンは、必ずしも全ての面において元の人間に優っているとは限らない。例えば、半ば無理矢理な遺伝子操作によって五感を強化されたニューマンは、個体ごとに、その寿命の差が極端である。平たく言えば、明日の命すらも解らない、と言う事だ。
 そのために彼らは孤児も多く、また、人権的差別も強い。中には高度な人工知能を登載した、自立型のロボットであるに過ぎないアンドロイドより、扱いが低い者すら少なくない。

 こういう経緯があるため、ニューマン族というものは得てして、人間不信であり、他人との交流を自ら避けがちだ。
 だが、目の前に居るこの娘はどうだろう。およそニューマンという言葉から感じられるイメージとは、程遠い明るさだ。人を疑う事を知らない、まるで玩具を目の前にした子供の様な笑顔で、陳列されている酒には目もくれず、オレンジジュースを注文してくる。

 タークスの中にもニューマンは多く存在するが、その中の誰と比べても、これほどに明るい人間は居ない。皆、笑っていても必ずどこかに陰がある。
 この娘からは、それが感じられないのだ。だから、サムスは驚き、それと同時に痛く感激もしていた。どんなに表の光世界で人気者でも、所詮、彼女は闇世界で生きる人間である。それだけに、時として光の世界を渇望する気持ちに、とらわれる事がある。
 そんな彼女には、こんなにまぶしい、それもニューマンの少女が目の前に居ると言うだけで、歓びが腹の底から、ふつふつと涌き出てくる様な感じがしたのだ。

 ふと、サムスはこの少女の名前が知りたくなった。

「あらん、可愛いお客さんだわー……あなた、お名前は?」

 サムスはとびきりの笑顔で、この少女の名前を聞いた。

「あたしはさ〜、さがらって言うんだぜ〜♪」

 少女もまた、にんまりと笑顔を全面に作って答える。これもサムスの期待通りだった。だが、この先の彼女の言葉が、瞬間、夢の世界に入り込んでいたサムスを現実に引き戻す。

「ハンターやってんだ〜。昨日はさ、パイオニア1の連中が残した武器を見つけたんだぜ〜」

 ハンター。無論、裏のものでは無いだろうが、何の問題も背負っていないものが、こんな因果な商売をやる訳が無いのだ。この世界においてハンターなど、現代で言えば探偵やスパイもどきの十分な汚れ仕事なのだ。
 だが、現実に引き戻された彼女は即座に、なぜこんな少女がハンターをやっているのか、という疑問が浮かび上がった。

 サムスは、裏世界の一大組織であるタークスのボスだ。自然、あらゆる人間と付き合ってきたが、ハンターでこんな雰囲気を持つ者とは一度も出会った事が無かった。

 注文されたオレンジジュースを差し出しつつも、サムスの興味は再び最大限に達していた……。


To be continue.
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Silent of Pioneer2 III
ダイア [HomePage] [Mail]
11/10(Sun) 20:02
 三番手は太陽の使者(違)、ダイアでっす! それじゃ、行くよん。


Silent of Pioneer2

#3 少女と暗殺者


「ハアッ、ハアッ……!」

 全てを覆い尽くす暗闇の中に、ひとりの男が走る足音と、荒い呼吸が聞こえる。
 暗くてその表情を読み取る事は出来なかったが、息づかいから彼が恐怖している、と言う事が伺えた。
 男はしばらく何者かから、逃げる様にして走っていたが、やがて体力が尽きたのか、歩調をゆるめてしまう。

 男はものすごい汗をかいている。死に物狂いで走った事もあるだろうが、この尋常でない量の汗はそれだけが原因ではなかろう。

「ここまで、逃げれば、ハアッ……大丈、夫っ、だろう……」

 やはり男は何者かから逃げていたようだが、うまく撒けたのか、近くにあった壁に背をもたれかける。
 だが、男が安心できたのはその時だけだった。上げた目に、信じられない映像が写る。

「ヒ……!」
「逃げると……恐怖する時間が長引くだけよ」

 男の目に写った者は、彼が今まさに撒いた思った相手だった。その姿は死神に見える。
 男をずっとつけてきたらしい、女の冷たい声が彼を絶望の淵に追い込む。そして追い詰めた獲物に、女はゆっくりと近づいて行く。
 男は恐怖のあまりに、これ以上下がり様も無い壁に、何度も背中を打ちつける。やがて、その目は暗闇に鈍く物体を捉える。

「た、助け――」

 銃声。彼は最後に命乞いをした様だが、その言葉が最後まで続けられる事はなかった。フォトンの弾丸に頭部を撃ち抜かれた男は、全身の制御を失い、その場に音もなく崩れ落ちる。
 そして相手の絶命を確認した女は、何事も無かったかの様にその場を立ち去ったのだった。







「邪魔するぜ〜〜〜♪」
「あらん、いらっしゃーい」
「にゃーん。今日もオレンジジュースを頼むぜ〜」
「はいなぁ……でも、さがらちゃん。あなた毎日来ているけど、そんなにウチのジュースを気に入ってくれたのかしら?」

 さがらと言う少女は、あの日ここを訪れてからと言うもの、毎日の様にこの酒場に通っていたのだった。当人が言うには、ここのオレンジジュースが痛く気に入ったらしいが、サムスとしてはどうも府に落ちなかった。

 まさかとは思うが、仮にも自分は秘密組織タークスのボスである。この娘が、自分の命を狙う刺客である可能性も無くはないのだ。
 だが、さがらはサムスのそんな考えなど気づく風も無く、陽気な口調で彼女との会話とオレンジジュースを楽しんでいる。

 そんなさがらを見て、サムスは自分の考えを打ち消した。普段ならば、こんな甘い判断はしないはずなのだが、なぜかこの娘だけは信じられるような気持ちになってしまうのだ。
 サムスはそんな自分に気づき、ふと自嘲気味な笑顔をつくった。しかし、これもさがらには見えていないようだった。

 やがて、パイオニア2の人工的な夜も更けてきた。パイオニア2は、移民船として乗員の精神的負担を最低限に抑えるために、可能な限り母星と同じ環境を再現できる様に設計されていた。
 だがこのシステムは、船としての性能を制限してしまう上、維持もとてつもない費用と労力を要するため、一部からは建造計画の時から反対が出ていたのだったが、時のタイレル総督が強引に推し進めたのだった。

「さがらちゃん、今日はもう夜も遅いわ。そろそろお帰りなさいな」
「わかったぜ〜」

 だが、それだけ母星と似た環境を構築しても、やはり完全ではなかった。まず時間感覚が狂い、今では子供でも夜中に起きている事がざらにあったりするのだ。
 もっとも、それでも別計画の居住環境をほとんど無視した、航行能力優先のものより、遥かにましだったのだが。

 ややあって、帰り支度を整えたさがらが、元気な挨拶を残して去って行った。サムスはその後ろ姿を見つめながらため息をついた。
 だが、休む間もなく入れ替わりに今度は小太りの中年の男が店に入ってきた。

「ヨォ〜サムスちゃあん! 今日も綺麗だねぇ、結婚してくれー!」
「あらいらっしゃいな。ほめてくれるのは歓迎だけど、最後のは遠慮するわん」

 中年の男は既に酔っているらしく、酒臭い息を吐きながらカウンター前の席に座った。男はそのまましばらくうとうとしていた様だが、はたと何か気づいたらしく、服のポケットをごそごそやった。
 サムスがそれを、やや構えた姿勢で見ていると、やがてポケットから小型の光ディスクを取り出した。男はそれを指でつまんだまま、ずいとサムスの顔の前に差し出す。

「これサムスちゃんに上げるよ〜……ウィック」
「あらー、何かしら?」
「人気のユニット、「ザ・ふじおスターズ」の新曲だよ。俺ぁ、これのファンでねぇ」
「んー、よく解んないけど、もらっとくわねー」

 サムスはそんなユニットは知らないし、別に聴きたくもなかったが、とりあえず相手の好意なので頂いておく事にした。
 それを見て男は満足そうにしていたが、今度は別のポケットからけたたましい電子音が鳴った。音からして携帯電話であろう。だが、その呼出音に彼は異常な反応を示した。

「い、いまでるいまでる……ッ! はいもしもし? ……うわっ! そんな大声出すなよ!! 近所に聞こえたらどうすん……ッ! 解った、今すぐに帰る! 帰りますから!!」

 男が悲鳴を上げながら電話を切る。

「あらー、どうしたのかしら……?」
「ちょ、ちょっと家内から……悪いねサムスちゃん。今日はもうか、帰るからっ! またねっ!!」

 男はそれだけ言い残すと、慌ただしく帰っていった。サムスはそれを苦笑まじりに見つめていたが、やがて真顔になって店を閉じ始めた。まだ酒場の経営時間としては浅い時間帯であるのに、だ。
 やがて店を閉め切ると、サムスは店の奥の狭い個室の前に立つと、パスコード、指紋認証、網膜認証、声帯認証などの個室には全く不釣り合いな、厳重なロックを解除して入って行き、再びロックする。
 そして、先ほど男からもらったディスクを再生器にかける。

『……こちら連絡員ナンバー七三七二……』

 やがて再生されたディスクから聞こえてきた音は、人気ユニットの新曲などではなかった。それは、タークスのボスであるサムス宛に記録された、極秘情報だったのだ。
 ディスクは再生を続ける。

『……ボス、ここの所「ブラック・ハウンド」が妙な動きを見せています。先日ボスが始末した男も、どうやらそれと関係のある奴だった様です。
 まだ詳細は掴めていないのですが、ともかく注意して下さい――以上。なお、このディスクのデータは再生終了と共に消滅する』

 その声と同時に再生が終了した。ディスクが再生機から吐き出されたが、これはもはや何の意味も成さないだろう。
 サムスはしばらく思案を巡らしていた様だったが、やがてクスリ、と笑った。

「フ……面白いじゃない。「ブラック・ハウンド」……何をするつもりなのか知らないけれど、せいぜい私を失望させないで頂戴ね」


To be continue.
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Silent of Pioneer2 IV
モンタマン [HomePage] [Mail]
11/20(Wed) 1:24
四番手は、愛と正義とバナナのヒーロー! モンタマンこと、ボキがお送りするでモンタよ。


Silent of Pioneer2

#4 黒い猟犬


「……「これ」が、俺の新しい獲物か?」

 薄暗く狭い室内に、二つの人影が見える。片方は長身で、やや機械的であるが、その声色には異様な威圧感が含まれている。おそらくアンドロイドであろう。
 その声が、室内に響く。

「その通りだ……キリーク・ザ・ブラックハウンド」

 だが、それを聞いていたもう一人の者は、そんな殺気の塊とでも言えるものに、少しも動じる様子がなく、その持ち主に言葉を返した。
 言葉遣いは硬かったが、高い声色から、それが女性のものであるという事が伺える。

「人間の女だな……。こんなカトンボみたいな奴が、俺を満足させてくれると言うのか?」

 キリークと呼ばれるこの者は、渡された写真にかなり不満があるようだった。だが、それは別に、写真の人間の女性が美しくないから、不満があった訳ではない。

 彼は秘密組織「ブラックハウンド」の使い、始末屋だった。
 「キリーク」は、この組織の始末屋の中でも、トップクラスの実力と最も危険な思考をもった、アンドロイドハンター・ヒューキャストだった。

 キリークは、人工生命体であるアンドロイドの中でも、最初から暗殺や破壊活動に特化させるべく設計されたヒューキャストだった。
 それだけに、その戦闘能力は凄まじく、腕利きのハンターが数人がかりで襲いかかっても、返り討ちに逢う程だ。
 しかし彼は、強敵と闘いその命を喰らう事にのみ、己の存在意義を見いだしているため、始末する相手を非常に選んだ。
 無論、依頼主もそれを熟知しているため――その程度の知識が無い者では、そもそも「彼」に会う事すら、叶わない――半端な依頼を、申し込んだりはしない。

 だが、そうであるはずなのに、今指定された相手の写真はどうみても、下っ端の始末屋で事足りそうな奴だった。
 彼には、それが不満だったのだ。

「キリーク……お前らしくも無いな。まさか、お前程の者が「タークス」を知らん訳では、あるまい」
「なんだと? ……では、この女がそうだと言うのか」
「そうだ。サムス・アラン、タークスのボスだよ」

「俺を、満足させてくれるんだろうな?」
「安心しろ……彼女は見た目ほど弱くは無い。ま……お前すらも騙すその容姿が、一つの武器ではあるがね」
「ククッ……良いだろう。この女は俺が喰らってやる」

 それだけ言うと、キリークは足早に部屋を去ってしまった。後には、冷徹な微笑を張り付かせたままの、女が残っただけだった。





「暇だわー……」

 その日、秘密組織タークスのボス、サムス・アランは暇を持て余していた。あれからしばらく、さがらと言う少女は表社会でダミーとして経営している、彼女の店に来なかった。

 あまり目に付かない場所に店があるため、頻繁に客が出入りしないのでこうなる事が多い。最も、仮にも彼女は秘密組織のボスであるのだから、人目につく場所に自分の店を出すなど論外だが。

 だが、客がやって来ない訳では無く、置いてある酒も良質なものが多いので、リピーターの客はいる。つまりは人目につき難く、さりげなく経営しているからカムフラージュとなる。

 ともかくも、彼女は暇だった。先日「ブラック・ハウンド」が暗躍しているとの報告さえ受けたものの、別に彼女がそれを捜査しなくてはならない訳でもない。

 そういう仕事を専門にこなす連中が、チーム内にきちんと存在しているのだ。自分は、その後始末をすれば良いだけだ。もちろん用心はしているが、それだけでは暇が解消できる程の仕事にはならない。

 だが、ようやく彼女の暇を解消してくれるベルの音が店内に響いた。
 客である。

「にゃーんっ。おっひさっしぶりだぜーーー♪」
「あらぁん、さがらちゃんじゃなーい。待ってたのよー」

 サムスにとって嬉しいことが、ようやくの来客が最初に一目見て気に入った、さがらと言う少女だった事だ。
 彼女がしばらく店に来ていなかった事は、先にも述べた。
 だが、実は数回来ただけで、ぷつんと来なくなってしまう人もいるため、さがらもその類の客では無いかと疑っていた矢先だった。
 それだけに、再会の喜びも一塩と言うものだ。

 サムスは再びオレンジジュースを彼女に差し出しながらも、たわいない話をして夜を更かして行くのだった。





 暗闇に鈍く、二つの光が輝く。それはアンドロイドの特徴的なアイ・センサーの輝きだった。

「くく、待っていろサムス・アラン。あれから数年……闘いに身を投じるしか無い俺に、再び、喜びを感じさせてくれる相手……」

 夜は、まだ続く。


To be continue.
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Silent of Pioneer2 V
キット [HomePage] [Mail]
11/25(Mon) 16:06
こんにちは。五番手は私、キットがお送りします。
これもお仕事なんです。ええ、ハイ。給料弾んで欲しいですよ。


Silent of Pioneer2

#5 そして夜明け


 その日、サムスはパイオニア2内の、共同墓地区画に訪れていた。
技術が発達し、宇宙船の惑星間航行が可能になったとは言え、それでもやはり惑星コーラル――彼らの本星――から、ラグオルまでの旅路は長いものであった。
 そのため、中にはついに土の大地を踏むことなく、そしてパイオニア1先遣隊の失踪、ラグオルの異状を知る事なく死んでいった者たちがいた。それは天命を全うした者、無慈悲な人間によりその命を奪われた者、自ら命を絶ってしまった者……様々である。

 そして、亡くなった人間を供養するための儀式や施設――つまりは、葬式や墓地の存在は、今この時代にあっても存続していた。
 巨大とはいえ、宇宙船と言う環境を考えるならば、「科学的」に人間が生きていくためには必要の無い、こういう習慣を続けるのは、良い事とは言えない。なぜなら、宇宙船と言うものはいくらその環境を母星に似せた所で、所詮は人工物である。消費できる物資、生産できる物資、そして消費によって廃棄されたものを処理するのには限界があるからだ。

 しかしそれでも、政府はコーラルでの習慣を続ける事を認めていた。科学的には、確かにこう言った類のものは必要ない。が、人間は機械ではなく、生の動物である。多分に精神的な物に体を左右される存在であって、やはり、古来より続けてきた習慣と言うのは、生きていく上で必要不可欠な物なのであった。
 ただ、それでもコーラルそのままと言う訳にはいかなく、一部、本星の首都圏でも採用されていた、一つのビルディング内に立体駐車場のごとく、納骨する場所を各家系ごとに設けた、共同墓地があるのみではあったが。
 そして、サムスも裏社会のトップと言う地位にあっても、やはり人の子である。彼女にとって、それが本当に親としての役割を、果たし続けていたかどうかは解らないが、ともかく彼女にも親はいた。

「急にこんな事をしたくなるなんて、私らしくもないけど――」

 サムスは、供えた線香に火をつける。この時代、宗教の多様さも認められていたため、区画の中には多種多様な宗教的供養が見られた。彼女は、地球で言う仏教に近い宗派に属しているらしい。両手を合わせた。






「雨ねーー……」

 サムスが墓地を後にした時、既に空は灰色になっており、雨が降っていた。
 これもまた、居住環境を最重視されて作られた、パイオニアならではである。さすがに台風や洪水、竜巻や地震は再現されていないが、この船の自然環境は非常に良くできていた。

 しとしとと降りしきる雨の中、彼女は家路につく。
 雨の日は、あらゆるものが違って見える。空の模様はもちろん、その空気、風景、行き交う人々……すべてが晴れの日とは違う。
 サムスは雨が好きだった。太陽――正しくは、太陽灯が照射されているだけであるが――に照らされ、ぎらぎらとした活気に包まれている町は、彼女の好むところではなかった。雨が降ることにより、空気がやわらぎ、湿った地面を踏みしめる。そんなやさしい感覚が、サムスは好きだったのだ。






 ややあって、サムスは自分の店にたどりついた。

(……なにか、おかしいわ)

 だが、彼女の五感が警告を発している。いつもなら安堵できる場所であるはずなのに、今日に限ってそれが感じられない。
 サムスは最大限に用心しながら、店に近づいた。すると

「あっサムスーー。うにゃんっ、待ってたんだぜーー」
「あらっ? さがらちゃん。どうしたのかしらー……」
「ジュース飲みにきたけど、閉まってたから、サムスが帰ってくるまで待ってたんだぜー」
「あらら、それは悪かったわねん。すぐに用意するから待っててー」

 意外な事に、さがらが待っていた。彼女から悪意は感じられないし、別に嫌な事でもないのだが、サムスの五感は未だに警告を発している。
 サムスはやさしい口調ながら、幾分緊張した面持ちでドアを開けた。

「……!?」
「うにゃっ……」

 サムスがゆっくりと開いたドアの先には、信じられない事に人の死体が転がっていた。しかも、その顔はみるも無惨に破壊されてはいたものの、見覚えがあった。

(そうだ――あの時店に来た、連絡員!)

「来たな……サムス・アラン」
「!」

 店の奥から、地獄の底から響くような声が聞こえてくる。

「あなたは……」
「俺の名はキリーク……お前を喰らう者だ!」

 声と同時に、店の奥から影が飛びかかってきた。サムスはとっさにそれを避け、すかさず隠し持っていたヴァリスタを撃つ。

「さがらちゃん、お逃げなさい!」
「……」

 サムスは早く、と叫んだが、恐怖にとらわれているのか、さがらは動かない。

「安心しろ……お前を喰らうまで、その娘には手出しせん」
「く……随分な自信ねえ!」
「そうだ! 心行くまで俺を愉しませろ……サムス・アラン!」

 キリークの持つ鎌状の武器、ソウルイーターが彼女に迫った。






 あらから、どれぐらい経っただろうか。サムスは、息も絶え絶えながら立っていた。その視線の先には、先ほどまでキリークだったものが転がっていた。
 キリークの傷もさることながら、サムスがその美しい肢体に負った傷から、戦いが凄まじいものであった事が伺える。

 敵を倒せた安堵からか、サムスはその場に腰を降ろしてしまう。
 そんなサムスに、キリークの約束通り、手出しされなかったさがらが近づいてくる。

「さがらちゃん……もう、大丈夫よ」
「ああ……」

 だが、そんなサムスの目には信じられない光景が写っていた。

「さがら……ちゃん?」
「この時を待ってたんだ」

 さがらの手には、赤いハンドガンが握られていた。

「何故……私は、貴方からそんな悪意は感じとれなかった」
「そりゃあ、そうさ」
「え……?」
「私は始めから、お前を消すために作られた存在。この私の脳は、送られてきた信号で、二つの性格に切り替わる。
 今までお前に接していたのは、もう一つの無邪気な私の方だ」

 さがらは、先ほどまでとは全く違う様子で続ける。

「だが、お前は強いし、その周りのガードも固い。そのため、キリークを厄介払いに使わせてもらったよ」
「あなた、まさか……」
「そう。私も「ブラック・ハウンド」の一員だ。我々にとって、「タークス」は邪魔なんだ」

「私を消した所で、「タークス」が崩壊するとでも思ってるのかしら?」
「さあな。それは上が判断する事だ。……さて、おしゃべりはここまでだ」

 さがらはハンドガンの安全弁を外す。だが、サムスは何を想ったのか、微笑を浮かべたまま目を閉じる。あるいは、それはこの世のしがらみから解き放たれる事の、喜びだったのかもしれない。

 銃声が轟いた。






Epilogue

 その後、ボスを失った「タークス」は、「ブラック・ハウンド」の予想に反し、以前よりも結束力を高めた。新しいボスには、かつてのボスの盟友だった――狼――の通り名を持つ、純白の衣装に身を包んだニューマンの女性が就いた。
 「ブラック・ハウンド」は、「タークス」の怨念を受けるかのごとくして、急速にその勢力を弱めていった。もはや、この組織に力はないであろう。

 しかし、この様な出来事も、人々に知られる事はなかった。
 世間の目は、常にラグオルにあり、パイオニア2内の出来事などにはほとんど関心を示さない。マスメディアの規制も厳しい世の中では、裏組織の事など知られる由も無かったのだ。

 そしてこの事件があった翌日、ハンターズギルドはラグオルの古代遺跡を発見する事になる。



END
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あとがき
Mr.X線 [HomePage] [Mail]
11/25(Mon) 16:14
こんにちは。イングラムを始めとする各キャラの、本体である
Mr.X線と申します。

最初に、
この駄文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございます。
なにしろ素人でありますので、お見苦しい点が多々あったかと。

そして、お詫びしたい事があります。


「と に か く 申 し 訳 ご ざ い ま せ ん」


ええはい、途方も無く暗い話になってしまいましたよ。ええ。
読んでいて気分が悪くなった方、本当にすみませんでした。

次回は! 次回こそ、タークスらしい、明るく愉しい話にしよ
うと思いますので、見捨てないで頂けると嬉しいです(爆


それではまた。


平成十四年 十一月二五日 静岡県 某温泉街にて
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Re:星が綺麗ね。。。(笑)
おりん [HomePage] [Mail]
11/26(Tue) 10:19
なかなか読み応えのある内容でよかったですよ〜(^^)
これからの作品にも期待できそうです。

でもたったひとつだけ不満が。(^^;
サムスの後任は、ボスのキャラの中から選んで欲しかったです。
ウルフさんだともう不安で不安で。。。(笑)

それとうちも、作中で人様のキャラに死んでもらったことがあります。
そのときはタークスらしい笑い話だったので
ネタにされた本人たちにもけっこうウケてたんですけどね。

それから、サムスのお店で出てくるオレンジジュース。
あれはきっと、ロボが飲むと身体がサビるので有名な伝説の飲物「なつ」だと思います。
でもかなりの年代モノなので、扱ってるのはサムスのお店だけだとか。。。
とにかく、がらたんがおなかこわさなくてよかったです。(笑)

#死んだサムスはあの世での修行を開始!! そして冥界でも事件が。。。
 次回「華麗なる煩悩コップ参上!」の巻(笑)
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Re:お茶が美味しい〜わね・・・
GUM [Mail]
11/27(Wed) 9:24

 私のただ長いだけの話とは違って、上手くまとまっている良い話です。

 特に、最初で各キャラが一言づつ話すのは良いと思います。
自分的にはサガラちゃんラブ・・・・(お

 暗い話とは言いますが、もともとPSOのゲームの設定自体が暗いので
しかたないでしょう。

 本星(一部ではコーラル、既刊の小説ではフォーブ)の荒廃
探索途中に関する
また探索終了後の惑星ラグオルに決定する上での軍と政府のしがらみ。

移民完了直前の惑星ラグオルでの事故。

 暗いですねえ・・・極限に。

 逆に、暗い話のおかげで小説にするネタは尽きませんが
それに沿った小説が暗くなりがちなのは仕方ないでしょう。

 後、どこかで書きましたが、キャラを頂いた以上は
そのキャラをどう動かし、どう言う役割を持たせるかは
作者次第です。

 余り気にせず書いたほうが良いと思います。

 それでは、また次回作を期待します。
レスをつける



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