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- 時を越えた宿命〜第1話〜その1〜 - GUM [11/21(Thr) 18:18]
時を越えた宿命〜第1話〜その2〜 - GUM [11/21(Thr) 18:20]
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時を越えた宿命〜第1話〜後書き〜 - GUM [11/21(Thr) 18:43]



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時を越えた宿命〜第1話〜その1〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:18
      PSOオリジナル小説「時を越えた宿命」
       《第1話:時を越えた勇者達〜前編》

 その日の訓練も苛酷だった。まだ若いヒューマー(男性ヒュ−マンのハンター)のラルフは痛みの伴う体をシャワ−で少し静め
無理にでもベッドに転がした。

 「いてててて・・・・。クソ。あの鬼教官め。いくらこっちが弱いからって、チクチクいたぶる様な攻め方しなくていいじゃないか。くそ〜。」

 ぶつくさと文句を言ってるうちに寝てしまったのか、翌朝の時間には目を覚ましていた。
ヴィジフォンが鳴り、ラルフはスイッチを入れた。迂闊にもカメラのスイッチをオンにしたままだった。

掛けてきた相手の姿が出てくる。それは、昨日の晩、散々文句を言っていた相手の鬼教官本人からだった。

 「おはよ−。ラルフ君。昨日は良く眠れたかい?」

「体中が悲鳴上げてますよ。何の用です?こんな朝早くに。」

「おやおや、ご機嫌斜めだねえ。今日の訓練は、第3大広間でやるよ。パ−トナ−のクレイにもちゃんと言っときな。
時間は10:00からだ。いいな。ああ、それと、ヴィジフォンに出るときはきちんと下着くらい着とけよ。
あんまり朝から変なもの見せるんじゃないぞ。じゃあ、訓練の時間に遅れるなよ。」

 ヴィジフォンがきちんと切れてるのを確認した上で、ラルフは文句を言い返した。

「てめ−ホントに女か?だから、いつまでたっても回りに男っ気がないんだよ。
 女だっていうなら、もう少し女らしくしてみろってんだよ!畜生。」

 「お−い、ラルフ。起きてるのか−?起きてたら、ここ開けろ−。おれ様が来てやったぞ−。お−い!寝てるのか−?」

 それは、先ほど教官からも言われた、ラルフの訓練パ−トナ−のクレイだった。
ラルフは一瞬居留守を決め込もうと思ったが、あのクレイのことだ。
きっと、今の文句を聞いた上で、つまり部屋に自分がいると分かって呼びかけているのだろう。
ラルフは、痛みが取れた体を確認するかのように何回か動かし、下着を着た上で入口のロックを解いた。

「おっす。今日の訓練、何時からだい。もう連絡来たんだろう?姉御からさ。」

 現れたのは、ラルフと同じく、若いヒューマー(男性ヒュ−マンのハンタ−)のクレイだ。
クレイはその鬼教官のことを「姉御」と呼んでいる。もっとも、当の本人からみれば、迷惑な呼ばれ方にちがいない。
その鬼教官とは、ギルド公認レベルが70をも越えるハニュエール(女性ニュ−マンのハンタ−)のフィオナだった。

 フィオナは、小柄であった。
ヒュ−マ−としては背が低いラルフよりもさらに頭二つ分低かった。
しかし、レベルが高い所為か、誰も彼女を不当に扱うものはいなかった。
もっとも、からかったりするものは後を絶たなかったが、そういった行いをした可哀相な人物は
自分の身をもって、自分の行った愚行の結果を知ることとなる。

 「10時からさ、第3大広間だってよ。」

 惑星ラグオルに住む生物が、おとなしく、めったに人を襲わないのは周知の事実だが
体を全く動かさないことは、ハンタ−ズにとって、何よりも苦痛であった。
そのため、パイオニア2には、立体映像とナノマシンを使った、訓練用の施設があった。
決して充実してるとは言えないが、それなりの量と設備は整っていた。
個人訓練用に作られた、個人部屋。小型の敵との戦闘訓練用に作られた小広間。
天井を高くとって、空中の敵や大型の敵との戦闘にも使用できるようにしてある中広間。
かなりの広さを誇り、あらゆる敵との実戦形式での訓練にも使える大広間。この他にも幾つかあった。

 「ってことは、立体映像と、仮想獣(バ−チャルビ−スト)の組合せかな?」

やっと実践形式の訓練ができるのが嬉しいのか、クレイはやる気十分だった。

 「間違い無いだろう。これで実戦形式で訓練ができるってものだ。」

「まあな、やっと、半人前に扱われだしたってことかな?」

「今までは、全部基礎訓練だったものなあ。やれ剣の扱いはどうの、武器の手入れがどうのって。」

「まあ、あれだけの人が、オレ等なんかに、肩入れしてくれてるんだ。文句は言えないよ。だがなあ。」

「どうした?まさか、あれしきの訓練が辛いとか言わないよな?それとも、もっと早く実戦訓練がしたかったのか?」

 「いや、フィオナ教官の強さに圧倒されてさ。あんなにちっこいのに、あんなに強いのは反則だよな。
 見かけだって、可愛いんだしさ。あれでもう少し女らしければねえ。そうすりゃ俺も、もうちょっと態度が変わるってものなのに。
 まあ、そうなれば、俺だって・・・・・・。」
 
 途中で、クレイが目配せしているが、自説を展開中のラルフには全く意味がなかった。

「女らしくなくて、悪かったわね。そんなの、あたしの勝手だろ?大体アンタだってそんなだから、彼女の一人もできないんだよ。
 あたしに文句言う前に、自分の態度直しな!」

 そう言うや否や、ラルフの頭に一発拳骨をお見舞するフィオナ。思いっきり痛がるラルフ。

「いって−!!この・・・・」

文句を言おうと振り向いたすぐ前に、フィオナの真面目な顔があった。

「アンタが、あたしにどんな文句があっても、どんな風に思っていても良いけど、訓練だけは真面目にね。
 じゃ無いと、死ぬのは、アンタなんだから。じゃあ、訓練に遅れるなよ?」

 そう言うと、フィオナはラルフの部屋を出ていった。

「どうしたんだ、いきなり?」

「さあ。でも姉御もあれで、女らしいとこいっぱいあるんだぜ?もっと良く見てれば、分かると思うぞ?じゃあな、ラルフ、また後でな。」

本来、新米のハンタ−ズは2人部屋が原則だったが、ラルフもクレイも相方がちょうど決まっていなかった時であった。
そのため、お互いVIP扱いのハンタ−と同じで、一人で部屋を使用しているのである。
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時を越えた宿命〜第1話〜その2〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:20

 「じゃあいいかい、今日はラグオルで数多く目撃されてる原生動物の『ブ−マ』『ゴブ−マ』『ジゴブ−マ』相手に戦ってもらう。
 各々2匹、2匹、1匹の合計5匹だ。お前たちは、そっちの端からこの仮想の森の中をこっちの端まで歩いてくる。
 その間に敵が『順不同』『不規則な組合せ』で出てくる様にセッティングしてある。じゃあ、そっちの青いリングの中に立って。
 よし・・・訓練開始!!」

訓練が始まる。既に大広間の中は、惑星ラグオルの中でも居留地区の中心地である、森の一部が再現されていた。
かなり広い部屋の中をくねくねと道が続く。二人はそこを緊張のかけらもないかのように歩いていく。ふと、クレイが立ち止まった。

「待て、ラルフ。敵の気配がする」

 「分かった、焙り出してやる。・・・・・そこか。フォイエ!」

ラルフの左手からナノマシンで再現された、テクニックの炎が勢い良く飛び出していく。
それは木陰にいるであろう気配に当たった。

 「グヲ−−−−」

木陰から出てきたのは、茶色い体毛に覆われた土竜を大きくしたような生物だった。
ラグオルではコ−ドネ−ム『ブ−マ』で呼ばれる生物である。

 ラグオルにいる生物は皆比較的おとなしく、人に危害を加えないものばかりである。
が、もしなんらかの事情で今回同乗している多くの民間人が襲われるようなった時、ハンタ−ズはそれを守れなくてはいけない。
フィオナはそう思っているが、若い二人には意味がない事に思えるのか、イマイチやる気が感じられないのである。

 「よし!行くぞ、クレイ。」

「おう!」

二人の息は比較的合っていた。大した被害もなく、最初のブ−マを倒した二人は、道を先へと進んでいく。
しかし、油断していた二人は前後を黄色い体毛で覆われた『ゴブ−マ』と呼ばれる生き物2体に挟まれた。
道は狭く、回避するには隙間は無かった。

「畜生。このまま戦ってやるぜ!」

 「よし!ここは二人で背中合わせになって戦るか。」

「オッケ−!」

 しかし、この変則的な1VS1の戦いは、二人のほうが分が悪かった。
それでもあきらめずに戦い続けるのは良かったが、二人にはもはや回復薬もないようだった。
二人は大怪我を覚悟した。何かが近づいてくる気配を感じた。
その気配を感じた瞬間、目の前にいた原生生物の2体は地に崩れ落ちた。

「全く。見てらん無いねえ。この程度の敵もまともに倒せないのかい?」

そう言って、スイッチを切ったダガ−を腰のベルトの金具に止めると、二人の方へ向き直ったのは、フィオナだった。

「お二人さん。もし今のが、ラグオルで居留地生活を始めた、一般の人を襲ってるヤツラだったらどうするんだい?
 あんたらは逃げれても、そこにいる一般人たちは全滅するね。
 それを分かってやっているのかい?一応パイオニア1からのデ−タじゃ、原生生物は人を襲わないって話だけど
 居留地生活が始まってからはどうなるか分からないだろう?
 新しく居留地を作ったとこに巣を作っている生物とかは襲ってくると思うし。
 そんなことで、軍は動いてくれない。なら、あたし達ハンタ−ズがやるしかないだろう。」
 
 フィオナはラルフににじり寄る。

 「だから、二人には、もっと強くなってもらわないとって思ってたのさ。
 二人なら、やってくれると思ってたんだけどな。・・・・・・・私の見込み違いだったのか・・・・・。
 今のあんた達に、昔のあたし達を重ねて見てたのがいけないのかもしれないね。
 まあ・・・・・・・・・・・これ以上はやっても、意味無いかな。」

いつものフィオナらしからぬ様子に、二人は、ただ黙ってるしかなかった。

「無理にとは言わないから、最低限の戦いの基本だけは覚えててくれな。今日の訓練はもう、終わりにしよう。」

フィオナはそういうと、出ていった。後味の悪さを覚えつつ、自室へと帰っていく二人。
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時を越えた宿命〜第1話〜その3〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:22

 フィオナは、自室で、ベッドに横になり、昔を思い出していた。
彼女はパイオニア1で先にラグオルに行っていたハンタ−ズの一人だったのである。
しかし、パイオニア1を解体し、セントラルド−ムを作り、付近をテラフォ−ミング化するための緑を植え
緑溢れる頃の本星そっくりに作り替えていく日々の中で、彼女は一抹の不安を感じていた。

『いる・・・。ここには、何かがいる。私たちが触れてはいけない、そして、私たちでは手に負えない得体の知れない何かが。
 そしてそれは狙っている。私たちの命を。』

フィオナの不安は日々増すばかりであった。

ある時、予定以外の積み荷があることが発覚し、それを本星に戻すことになった。
ついでに今まで貯めた、この星の気候、原生生物、植物に至るまでの資料と、原生生物自身も何体か積み込み
高速貨物船で輸送することが決定したのだ。
ついては、万が一に備え、軍人とハンタ−ズの一部が乗り込むことになっていた。
フィオナは、自分が乗り込めるように、あらゆる手を尽くした。
そして、約半年の帰還の旅を経て、本星へと戻ってきたのであった。





「でも何の因果で、またパイオニア2に乗ってるんだろう。変だなあ・・・・・・あたし・・・・。」

自問自答はくり返される。今まで、何度くり返されてきた言葉だろうか。

 「まあ、あれこれ考えても始まらないか。それなりに、自分は強くなったはずだし。」

フィオナは、シャワ−で体と頭をすっきりさせ、バスタオル一枚を体に巻いたままの格好でベッドに横になった。


 翌朝、フィオナは、けたたましく鳴るヴィジフォンの音で起こされた。
すぐさま、スイッチをオンにするとこだったが、自分の格好を思いだし、カメラのスイッチはオフにしたままにした。

「誰?こんな朝早くから。」

「あれ、映像出ませんよ。姉御、今日の訓練どうするんですかあ?」

「今の格好が見せれるか。声だけで我慢しな。・・・・・訓練?やるきあるのかい?」

「姉御がよければ、お願いします。昨日、二人で話し合って、ちょっと不真面目だったなって思って、反省してたんです。
 駆け出しの俺たちに、ここまで本気で訓練してくれるなんて、ほんとは、感謝しなくちゃいけないのにって。
 だから、お願いできませんかね?」

「全く。最初からそう思ってやってくれりゃあ、こっちも要らぬ心配しなくてすんだんだ。
 ま あ、アンタ達が、そこに気が付いたんなら、今までの訓練も無駄じゃなくなるな。」

「じゃあ、今日は、少し遅くなったけど、13:00から、第2中広間で。いいかい、あんた達の反省ップリを、たっぷり見せとくれよ。
 私も、いきなり、きついメニュ−にして悪かったとは思ってるからさ。それとクレイ、それから隣にどうせいるんだろう?ラルフ。
 ありがとう。・・・・・・何だか、少し、気が楽になっちゃったな。」

フィオナはつい感傷的になった。それをクレイが茶化す。

 「姉御がそんな女らしいとこ見せるなんて、やっぱり女なんですねえ。」

「・・・・・・。やっぱり、メニュ−は少し、きつめで行こうかね。」

「ああ、スイマセン。冗談ッスよ。何か、姉御ったら、この頃元気がないなあって思って。つい・・・。」

「まあ、その気持ちだけは頂いとくよ。じゃあ、訓練の時間に遅れるなよ。」

ヴィジフォンを切ると、フィオナは深くため息をついた。

「あんな駆け出しに心配されるようじゃ、このフィオナ様もまだまだだって事かな?」

そういうと、フィオナは、午後の訓練のための手配をすると、身仕度を始めた。
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時を越えた宿命〜第1話〜その4〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:25
 「今回の訓練は、『モスマント』という、言わば蚊をでっかくしたような奴と戦ってもらう。
  こいつは、『モネスト』と言って、『モスマント』を次々に湧き出させる巣だ。
 巣を先にやっつけるか、蚊の方を先にやっつけるか、それはあんた達の自由だ。
 攻撃力も押さえぎみにしとくから、派手にやってやんな。」

 「はい。お任せ下さい。」

「全力で頑張ります。」

いやに張り切る二人に、フィオナは苦笑せざるを得なかった。

「ふう。まったく。あの二人は、ほんとに、よく似てるな。昔の私たちに。
 ま、それにしても、張り切るのもいいけど、張り切りすぎると、かえって、戦いずらいのに。
 ま、お手並み拝見と行きますか。」


二人は、これまでにないくらい真面目に戦っていた。何せ、ほとんど攻撃力はないとはいえ、いかんせん数が多すぎる。
目の前の二匹をやっつけたと思ったら、後ろから3、4匹に攻撃される。巣を先にやった方がいい。
二人がこれに気がついたのは、戦いが始まってしばらくしてであった。

「ラルフ、後ろに4匹ほど回ったぞ!」

「おう!お前の後ろにも2匹行ったぞ!」

「よっしゃ−!!」

二人の息も合ってきた。フィオナは、つい、二人の連携攻撃に見入った。
それほど、二人の攻撃は上達していたのだろうか。そして、訓練終了の合図が鳴る。
セットしていたモネスト5匹分の敵が倒されたのだ。モスマントで言えば、およそ70匹が倒されたことになる。

「やるじゃないか。あんた達。まったく、昨日までとは大違いだよ。始めっからそうしてくれりゃあね・・・・。」

「初めて褒められちゃった。やった−!!」

子供っぽいとこのある、ラルフがはしゃぐ。

「ふう・・・・。少し褒めるとすぐこれだ。いいかい、今回あんた達が倒したのは・・・・・・・・・ん?」

「はい?」


何かの気配を上に感じ、フィオナは見上げた。二人も釣られて、上を見上げる。


かなり高めに取ってある中広間の天井付近から、輝く白い霧のようなものが発生していた。
それはゆっくりと広がり、今や天井から部屋の半分くらいの高さににまで充満してきたのである。

 「なんすか?あれ? 」

「さあ。何だろう。姉御、何かセットしてあるんすか?」

「ないよ。さっき、合図が鳴ったろう?あれでお仕舞いだよ。」

天井付近に溜まった霧が輝き出す。眩しくて目を開けていられないほどだ。そして、その輝きの中から銀色の球体が現れた。
まだ光が眩しく、フィオナ達にはよく見えなかった。

そして突然部屋の光は収まり、球体がゆっくりと降下してくる。さらに球体はその透明度を増していった。
それにより、球体の内部には横たわる人影があるのが見て取れた。

フィオナが人影を認めたのと、球体から現れた人影が落下し始めるのがちょうど同時となった。
フィオナは、その人影を受け止めるべく走った。間一髪で、その人影は床への直撃を受けずに済んだ。
突然の乱入者を床の上に横たえ、3人は屈んでその人物を観察とはいわないまでも見た。

3人がよく見ると、小柄な少女であることがわかった。まだ息をしている。生きているのだ。
外見の印象として、長い耳の先が尖っているのがよく見て取れる。肌の色は白。
髪の色は輝くほどの金髪で、その量は豊かだ。長い髪を背中までストレ−トに伸ばしていた。
白い外套は、3人には全く見覚えの無いデザインをしていた。
3人は、それ以上見るのをやめ、お互いの意見を出し合った。

「フィオナ教官。この子耳が尖ってて、服装はともかく、見た感じフォニュエール(女性ニュ−マンのフォ−ス)みたいなんだけど。
 でも、着てるものは見たこと無いようなデザインだな。」

「うん。そうだな。姉御、それにしても何だったんですか?さっきの発光体は。それに、何であんな高いとこに現れたのかな。
 トランスポ−タ−の出現座標のミスでかな。」

「まあ、なんにせよこの子は無事だったんだ。とにかくお偉いさんに話しに行こう。私たちじゃあわかんない事だらけだ。」

「はい。」

「じゃあ。その子は私が運ぶから。後、ついてきな。」

「姉御じゃ、運ぶの大変じゃないですか?オレが運びますよ。」

「馬鹿、相手は女の子だろう?もし運んでる途中で目を覚ましたら、一騒動起きるだろうが。それ位、考えろ。
 人目につかないように、特殊な通路を使う。はぐれたら命はないぞ。」

フィオナは普通のハンタ−ズでは入れないような通路に入っていった。
入っていくときに入口を守る兵士がいたが、フィオナがいるためか、何も言われずに入っていけた。
ラルフとクレイは、物珍しそうについていった。二人にとって、この通路は、入ってはいけない禁断の場所なのだ。
通路の奥のテレベーターに乗る。テレベーターは違うフロアーに行く時に乗る昇降機だ。
そして、フィオナはそういう通路をいくつも通り抜け、評議員居住区の入口の受付に行った。
後ろの二人は黙ったままだ。フィオナの言ったとうり誰とも出会うことはなかった。

「シンディ−評議員に取り次いでもらいたい。ハンタ−のフィオナが来たと言えばわかるはずだ。」

「かしこまりました。あちらのウェイティングル−ムでお待ち下さい。」

 受付のヴィジフォンに映るアンドロイドはニコリともせずにそう言って部屋の扉を開ける。
フィオナは少女を抱いたまま、その部屋に入っていった。後に、ラルフ、クレイと続く。
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時を越えた宿命〜第1話〜その5〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:27

 「おっそいな−シンディ−の奴、いつまで待たせるんだよ。」

ラルフ達にとっては、テレビで観ることしか無いような幹部クラスの評議員をフィオナは平然と呼び捨てにしている。
二人は、フィオナの凄さを改めて思い知らされた感じがした。ラルフはついフィオナのことをまじまじと見つめてしまう。
視線を感じ、フィオナはつい声を荒げてしまった。

「何、人の事じろじろ見てるんだよ。あたしの顔に何か変なものでもついてるか?」

「あ、いえ・・・・。別に変とかそういうのじゃなくて、何か凄い人だな−って思って。」

「シンディ−のことかい?ああ、昔、よく一緒にクエストとかをしてたことがあってね。
 いつの間にか、評議員なんてものになっちゃったな。今でも時々、こうやって会いに来てるのさ。」

「あら、でも、私達が出会ったのは、あなたが、私のピンチを救ってくれた時よね?」

奥の扉が開き、いきなり会話に参加してきたのは紛れもないシンディ−その人だった。
昔はハンタ−ズに所属していて、フォーマール(女性ヒュ−マンのフォ−ス)であったという。

「遅いじゃん、シンディ−。いつもなら別に構わないけど、今日は特別なんだからさ。」

「特別って・・・・?あら・・その子。・・・・もしかして、また?」

「はあ?またって?」

「空中から、光る球体が突然現れて、その球体の中から人が現れたって言う報告。これまでに1件、私のところに来ているの。」

「全く同じですね。」

「その人、今は、第5特別医務室で寝てるわよ。」

「へ−。他にもあんな状況で突然現れたのがいたんですか。」

「とにかく、そこのソファ−じゃ何だから、医務室に運びましょう。」

「任せとけって。」

フィオナは、いまだ眠り続ける少女を第5特別医務室と書かれた部屋に運び込むと、ベットに寝かせた。

 この部屋には、VIPが突然倒れた時とか、他の星で発見した未知の物質の解析などに使う
高度な医療設備や高価な研究資材が整っており、こういう場合には、最適な医務室であった。


室内には大勢の研究スタッフが居り、監督者として皆を指揮する人がいたが
これまたラルフ達にとってはテレビの中だけの存在としか言い様の無い人であった。
生態研究者の権威のクライン博士である。
クラインもまた、昔は、ハンタ−ズギルドのレイマー(男性ヒュ−マンのレンジャ−)であったという。

「おや、誰かと思ったらフィオナじゃないか。ひさしぶりだな。元気か?」

「クラインさんも元気そうじゃないですか。もしかして、シンディ−と組んで今回のことにあたってるんですか?」

「さすがに、察しが良いね。そのとうり。今回のことは、僕と、シンデイ−だけで全てを任されてるんだ。
 他のやつらは、もうすぐこのパイオニア2がラグオルに到着するから、いろいろと忙しいしね。
 ・・・あっと、すまんな。部下に呼ばれてる。・・・今行く−!!・・・じゃあまたな。フィオナ、何かわかったら連絡するから。」

 クラインが行ってしまうと、フィオナは、広い室内を見回した。
室内には、確かにシンディ−の言う通り、フィオナと同じくらいの背丈の女性が寝ている。
既に、彼女については、一通りの検査は終わっており、これから運び込まれた少女の検査をするという。

3人は、少女を任せると部屋を後にし、休憩室も兼ねているティ−ラウンジにやってきた。

 「何なんですかねえ、あの2人。」

「まあ、あたしらが気にしたってしょうがないさ。後は、偉いさんが決めるこった。ちょっと したことなら、教えてくれるだろうしね。」

「でも、姉御があんな凄い人達と知り合いとは、思いませんでしたよ。」

「まあね、みんな好きで偉くなったんじゃないって、言ってるよ。昔はみんなで一緒に、あっちこっち冒険してたものさ。
 今となってはいい思い出だな。」



 フィオナの思いは、10年前の本星へと飛ぶ。
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時を越えた宿命〜第1話〜その6〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:32
 
 「これが、ハンタ−ズライセンスなのね。思ったよりも、変なの−。」

 至って普通の、生活に使うカードと変わらない大きさのもの。
フィオナはもっと何か別のものを期待していたのだが、これじゃあ、ありがたみもあったものではない。
かなり前に申請し、自主的に訓練とかしていたが、昨日やっと手にすることができたのだ。

「こらこら、変ってことはないだろう。それよりあんまりはしゃぐな。
 ハンタ−ズたるもの何時いかなるときも、冷静にって、言ってきただろう?」

 割と背が高くすらっとした感じのレイマーの格好をした青年が居る。

 「でも、嬉しいんだもん。今くらい、いいじゃない?」

「そんな調子でこれからいくクエスト、失敗しないでよね?」

 クラインの肩ほどの高さのヒューキャシール(女性アンドロイドのハンター)だ。
まるで、データー保管庫にある、ある星の島国に居たと言われる『忍者』のような風貌の、それで居て何処か女性的なアンドロイドだ。

 「ウ〜。失礼な。ちょっと、リリス、このフィオナ様を甘く見ないでよね。」

「ごめんごめん。それだけ、一人前のことがいえるならいいけどね。」

 フィオナは今交付されたばかりのライセンスを手に持ち、クエストの監督役の二人と話していた。
この二人とはフィオナが初めてギルドに来てから今まで一緒に訓練をしてきたから、お互いに気心が知れ仲が良かった。
特に同じ女性のアンドロイドとは気があった。

監督役の片方はレイマ−の青年。クライン。もう一人はヒューキャシ−ルのリリスであった。
二人とも監督役に相応しくレベルは軽く30を越えている。

クエストは、この大陸の南の山のふもとの洞窟に狂暴な生物がいるから退治してくれというものであった。
既に一組のハンタ−ズを送ったが、クエストクリアーの報告は受けていないと言う。

「既に一組ハンタ−ズが行ってるはずって、どうしたのかな?そんなに洞窟の生物が強いのかな?」

「それは何とも言えんな。デ−タに依れば危険度はそれほどでないと言うがね。
 まあ、ギルドから貰ったデータを見る限りでは、先行してるハンターズのレベルは一様に低いみたいだから
 下手をしたら、既にやられてる可能性もあるのだが。」

 クラインとフィオナの会話をよそに、通信端末をぽこぽこといじっていたリリスが突然声を上げる。

 「クライン!緊急事態です!今入った情報によれば、洞窟内で一部落磐がおこってる模様。
 規模はそんなに大きくはないですが、これにより、洞窟内の怪物たちが刺激されより凶暴になる可能性もあります。 
 それに、先に行ったハンタ−ズはこれに巻き込まれているのかもしれません。」

「なるほど。よし、先を急ごう。下手したら、お仲間が洞窟の生物の腹の足しにされちまう。それだけは、何としても防がんとな。
 万が一の場合は、ムーンアトマイザー(死んだ仲間を行き返すアイテム。)を使おう。
 俺はリバーサー(死んだ仲間を行き返すテクニック。フォースだけが使うことができる)はつかえんからな。
 あるいは、死体を搬送して、シティの病院でリバーサーをかけてもらうかだ。」

「オッケ〜!」

「了解」
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時を越えた宿命〜第1話〜その7〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:33

 「みんな、無事?AKKUN(アックン)、GUM(ガム)、NIKO(ニコ)?返事してよ。私は無事よ!!」
 
 フォーマールの少女はうずたかく積まれた岩の中で、奇跡的にできた空間にいた為に死は免れた。
目の前に空いている小さな隙間から周りの状態が少しだけ見えた。

 洞窟の中は凄惨を極めていた。地震により突如天井が崩落してきたのであった。
辺りには天井となっていた岩の残骸が転がり、それまでその下に居た生き物を押しつぶしていた。
もうもうと舞う砂煙が視界を完全に無効化し、また大小さまざまな岩が転がっている為に満足に歩くこともできないだろうことが見て取れた。

 『皆生きててよ!どうにかして、助けるから。』

 フォーマールの少女はそう思うのだが、足を挟まれている上に
外の様子からすると、自分が皆を助けるのは無理なような気がしていた。 

 クエストに来る前に得ていた情報には、この地方は地震が多く洞窟などに入るときは気をつけるよう示唆されていたのだ。
運悪く、洞窟に来ていたハンタ−ズの4人もその生物との戦闘中この崩落に巻き込まれてしまった。
勿論その生物もハンターズと戦闘していたものは全て下敷きになった。
 
 「みんな?無事なの?返事してよ!私、足が挟まって動けないんだから〜〜!!」

「いてててて。どうやら、無事なのは俺たちだけのようだな。シンディ−。」

 シンディーと呼ばれたフォーマールの少女は声がした方に目凝らす。
すると、背の高い人影がいるのが見えた。装備からするとレイマーのようである。 

  レイマーは、天井の崩落の範囲のはじっこにいたため
腕を岩の下敷きにした以外比較的無事なようであった。

「ガム!!無事だったのね。」

「ああ、右腕が動かん。何とか岩ノ下から抜いたが、どうやらいかれたらしい。
 TP(テクニックポイント:テクニックを使うためのポイント)もさっきの戦いで空っぽだよ。
 おかげでレスタ(体力を回復するテクニック)も使えない。まいったね。回復できん。」

「私も、TPはあんまり残ってない・・・。他の二人は?」

「多分、アックンとニコはこの岩の下敷きだな。これだけ酷いんじゃ、助からんだろう。
 俺等のアイテムパック(あらゆるアイテムを小型化して入れて持ち運ぶためのもの)も多分この岩の下敷きだな。
 回復薬もないとは・・・・・・・。まいったな。」

「うん。それより、二人とも、まだ生きてないかな?出来れば助けたいけど。それに、戦いに夢中で地震のこと忘れてたよね。
 デ−タには要注意事項ってあったのに。」

「ああ。しかし、まいったね。お前さんを置いて、俺だけ戻るわけにはいかんしな・・・・。
 二人も、下敷きのままっていうわけにいかんだろうし。武器とアイテムもないから、戻るにも戻れんなあ・・・・・。」

二人が、崩落によるショックで、対策をどうしようか考えてるときだった。
本来、ここは餌となる食料がなくなり、手当しだいに人間を襲う生物の住みかだというのを、二人は失念していたのだ。

「あ、ガム、危ない!!後ろ!!!」

シンディ−が叫んだが、その時には、ガムの姿は無残なものとなっていた。
4、5匹の生物に取り囲まれ、あっという間に切り刻まれる。
背が比較的高く、肉付きもよかったガムの体は、一瞬にして生物の陰になった。

「ガム!ガム!!大丈夫?」

 シンディーの悲痛な叫びが木霊するが、ガムからの返答は無かった。
シンディ−は比較的岩の中のほうにいるため岩同士の隙間が狭く、今ガムを殺したであろう生物達は入ってこなかった。
どうにか彼女に近づこうとウロウロする生物たち。命の危機は無いと思い幾分かは安心した彼女。
しかし、彼女には泣いてる暇はなかった。

その隙間すら入れるほどの小型の生物が姿を現した。シンディ−を見つけ、嬉しそうに牙を剥き出す。

 「キシャーーーー!!」

 「なに?何でこんなのがいるの?こんなとこで、死ぬのは嫌!!ギフォイエ!」

 彼女を中心に炎の渦が発現し、それが広がっていく。炎系のテクニックで中級に位置するテクニックだ。
敵は単体なのに広範囲テクニックを使うのは気が動転していたからであろうか。
炎の渦がその小型の生物を焼いていく。

 「キシャーーーー!!!」

 しかし、それでもわずかに致命傷に足らないのであろう。小型の生物は怒りをあらわにしながら近づいて来る。

 「だめなの?もうTPがないわ!こんな、こんなとこで・・・・・。」

 思いのほか広範囲テクニックはTPを消費する。残りのTPで発動できるテクニックは何も無かった。

小型の生物は狭い隙間を難なくくぐり、シンディ−の側まで迫っていた。
その生物は、シンディーに狙いを付け大きな牙を剥き出し、口をあけた。攻撃態勢に入ったのだ。
シンディ−は思わず目を閉じてしまった。

ザシュ!!

固いものが肉を裂く音が辺りに響いた。シンディ−は、自分が裂かれたものと思い、死を覚悟した。


 

 「ねえ。そこのおねえさん!!無事〜??」

シンディ−呼ぶ声がして自分の無事を確認できたのは、その数秒後だった。

「どうやら無事みたいだね〜。あなただけでも助けられて、よかったよ〜。」

小柄なハニュエールが自分のそばに居た。小さな隙間を潜り抜けてここまでやってきたのだ。
手にしたダガ−のスイッチを切って、腰のベルトに止める。
ハニュエールの少女は小型の生物の死体を脇にどけた。
 
 シンディーの周りを取り囲んでいた岩は、リリスとクラインが持ってきた削岩機で徐々に小さくなっていった。
数十分後、洞窟のその場所に積まれていた岩は、すっかり砂礫と化した。
その中から動かなくなったヒューキャスト(男性アンドロイドのハンター)と
フォーニューム(男性ニュ−マンのフォ−ス)の死体が出てきた。

「アックン、ニコ・・・・。あ、ガムは?」

さっき、ガムが立っていたほうを振り返る。そこには、もともとが人間であったのがようやく分かる程度の肉の塊と化した死体があった。
シンディ−の目に涙があふれてきて止まらなくなった。

「あなたの仲間ですね。アンドロイドのほうは・・・・・・・・。だめですね。すべての回路に反応がないです。
 フォ−スの方は・・・・岩の直撃を受けて即死ですね。
 リバ−サ−でも、勿論ムーンアトマイザーでも二人とも復活できないほどの損傷を受けています。
 こちらにも死体がありますが・・・・・・・これは、既に肉の塊ですね。あ、失礼しました。もちろん、リバ−サ−は効きませんね。」

淡々と検死をしていくリリスに、声も出ない程のショックを受けて泣き続けているシンディ−。
黙々とその場を記録していくクライン。フィオナはそこに漂う暗い雰囲気が嫌だったが、何もできなかった。

「みんな、まってて。フィオナが生き残りの生物を始末してくるから。」

 意を決して洞窟の奥に行くフィオナ。
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時を越えた宿命〜第1話〜その8〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:34

  翌日。昨日の事件の後始末もフィオナの奮闘のおかげで、難なく終わり
シンディ−も幾らか回復したこともあり、ギルド内にあるパーソナルスペースで
4人はくつろぎながら自己紹介をした。

 「紹介が遅れて済まない。私がこの班の班長のクラインだ。レイマ−だ。」

「私はクラインのパ−トナ−のリリス。見てのとうりのヒューキャシールです。」

「わたしはフィオナ。つい昨日ハンタ−になったばかりだよ〜。よろしくね。」

「私はシンディ−。皆様には危ないとこを助けていただいて本当に有り難う御座います。フォーマールです。」

 「礼ならこいつに言ってやってください。迷路みたいな洞窟を、『こっちこっち』って言って、先に行っちゃったんですよ。
 その結果かどうかわかりませんが、おかげでギリギリ、あなたを救えたんです。」

 監督役のクラインに誉められ嬉しそうにはしゃぐフィオナ。

 「えへへへ!」

「そうですか。ありがとう。フィオナさん。」

「ところで、シンディ−さん。あなたはパ−トナ−を失った事になりますが
 良かったらフィオナのパ−トナ−になってやってはくれませんかね。レベルも近そうですし。」

「え?クラインさん。それっていいの?」

「いいんだよ。本人から、ギルドにそう言う書類を提出してくれればね。」

 数瞬シンディーは迷った。しかし、その後はきりっとした表情で顔を上げる。

 「分かりました。命の恩人に報いないとね。このまま何時までも悲しんでちゃ、あの3人に怒られちゃうかもしれないし。」

「やった〜。よろしくね。シンディ−さん。」

「相変わらず、調子いいんだから。フィオナは。」

「りりす〜。ひっど〜い。」

「あははは。皆さん。ほんとに有り難う御座います。あんまり強くないですけど、私、頑張りますからよろしくお願いしますね。」

「じゃあ、これから4人で一緒にクエスト出来るの?」

「そうよ。私やクラインが忙しいときは、シンディ−と2人でね。」

「よろしくね。シンディ−!!」

「こちらこそ。フィオナさん。」

「フィオナでいいってば。」

「あ、じゃあ・・・・・・フィオナ。」

 「そうそう。それでいいよ〜。じゃあ次のクエスト、とってこよ〜よ?みんなでいこ〜?」

「はいはい・・・・・・。」






 「フィ・・・・オナ・・・教・・・・官。フィオナ教官!!」

 不意に自分のことを呼ぶ声が聞こえ、はっとするフィオナ。

 「え??なに??」

「何じゃないですよ。どうしたんですか?ボ−ッとしちゃって。」

『あ、そっか、ティーラウンジで話してたんだったけ。』

 フィオナは、まさか物思いにふけてボーッとしてたなどと言えなかった。
顔を少し赤らめながらも自分を呼んだ理由を尋ねる。 
 
 「な・・・何でもいいだろう!それより、なんだい?」

「はい。さっき、クラインさんから連絡があって、医務室の二人のうち
 小さい子の方が目を覚ましたって。教官が運んだ女の子のほうです。」

 「え?目を覚ました?・・・・それを早く言えよな。」

自分の甘さを呪いながらも、それを言うなり、部屋を飛び出すフィオナ。

「いったい、この頃の姉御はおかしいよな。どうしたのかな?ボーっとしたり、急に怒ったりしてさ。」

「昔に、何かあったとしか思えないな。」

 フィオナの過去について、あれやこれや勝手に想像する二人。 

 「昔?今、姉御は昔を思い出してたのかな?」
 
 「かもな。昔別れた恋人と何かあったとか。」

 「恋人と言っても、昔の姉御の周りに居た男性って言ったら、クラインさんだろう?
 あるいは、秘密裏に付き合っていた人がいたとか?」

 「あ、そうだな。秘密裏に居た場合はわかんないな。でも、クラインさんだとしたらさ、
 訓練中に、何かあったとか・・・。」

 ラルフは渋い声真似をしたり、フィオナの声真似をした。 

 「『フィオナ君・・・君は中々筋が良いね・・。今夜僕の部屋においで、もっと色々なことを教えてあげよう』
 『いけませんわ教官・・・。』なんてな?あははははは・・・。」

 「おまえな・・・・。」
 
 クレイは、ラルフの後ろに立つ人影を見つめ、黙った。しかしそんなクレイの変化にもラルフは気がつかなかった。

「クラインさんって、まえ教官と一緒に組んでたんだろう?もしかして教官、クラインさんの事が、ス・・・・」

バキ!!

「いって〜〜〜!!なにすんだよ!!あっ!!」」

 いつの間に戻ったのか、フィオナはラルフに蹴りを入れた。

 「きょ・・・教官・・・!いったいいつの間に?」

 「恋人がどうのとか言う時からかな?あんた等そんな根も葉もないこと喋ってないでとっとと付いて来る!!」

 そう言うと、フィオナは飛び出していった。 

 「何で俺だけ〜〜。」

 蹴られた場所をさすりながら、ふて腐れるラルフ。

 「時と場所を考えないからな。お前は。」

そう言うと、部屋を出ていくクレイ。

「ゼッテ〜何かあるよ。・・・・・・・・・教官も何で俺だけ殴るかね。クレイが言ってるときには、絶対に現れないしさ。」

後に残されたラルフもぶつぶつ文句を言いつつもそれに続く。


(PSOオリジナル小説『時を越えた宿命』第1話「時を越えた勇者達〜前編」完)
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時を越えた宿命〜第1話〜後書き〜
GUM [Mail]
11/21(Thr) 18:43
久し振りです。ガムです。

今回のこの第1話の下書きを書いたのが昨年の2月。

そのまま第3話ほどまで書いた時に
角川スニーカー文庫から小説が2冊でました。

読んでびっくりw
前半部分がかなりそっくりだったんです。

でも、似てるのは仕方ないので、書き換えたりせず
字の文にある固有名詞だけ頂いて書き上げました。

頂いたものと言うのは、パイオニア2・・既刊の小説では3ですが
同型艦の為、それらの設備などの描写について
参考にさせていただいた程度です。

あとは完全にオリジナルです。

今回の話は前編、中編、後編の3部作です。
と言うより、1つの話を3分割した感じです。

今後も、そう言う感じで仕上げていきます。

今回の話は、昨年2月時点で書き上げた下書きと微妙に違っています。
それはGCPSOがでたからです。

会話の内容、登場武器、その他含めて全て
ベースはGCPSOに変更しました。

今後の話についても(第4話までですが)変更してあります。

かなり長い長編ですが
途中で呆れずに最後まで読みつづけていただければ幸いです。

およそ5日から10日で次の話をUPします。

感想が頂けると嬉しいです。

(*注:この話を読む時は画面最大で読むと
書き上げた時の大きさそのままになります。
画面の大きさは皆さんのお好きで、どんな大きさでも良いですが
それだと行変えがばらばらになってしまい
間とかが変わってしまいます。)

それでは失礼いたします。
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