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- タークス小説番外編・その2の前書き - ウルフ [12/23(Mon) 6:20]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第1話 - ウルフ [12/23(Mon) 7:00]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第2話 - ウルフ [12/23(Mon) 8:25]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第3話 - ウルフ [12/23(Mon) 9:16]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第4話 - ウルフ [12/23(Mon) 10:13]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第5話 - ウルフ [12/23(Mon) 11:02]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第6話 - ウルフ [12/23(Mon) 20:55]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第7話 - ウルフ [12/23(Mon) 21:58]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第8話 - ウルフ [12/23(Mon) 22:28]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第9話 - ウルフ [12/24(Tue) 6:18]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第10話 - ウルフ [12/24(Tue) 6:55]
「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第11話(最終話) - ウルフ [12/24(Tue) 7:32]
エピローグ - ウルフ [12/24(Tue) 7:51]
後書き - ウルフ [12/24(Tue) 8:07]
毎回 - Gum [12/25(Wed) 4:32]
ふふ - Shion [1/17(Fri) 15:38]



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タークス小説番外編・その2の前書き
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 6:20
本編の後に、また番外編です。
ただし、今回は、

「シリアスヴァージョン」

です。
ちなみに出演キャストも、

「タークスオールスター」

と言って、差し支えが無いくらい出ます。
たまたま出なかった人、ごめんなさい。

あくまで番外編であり、この作品だけは、今までの私の
全ての小説と、かけ離して考えて下さい。

なお、やはりこの作品中にも、所々に色んなパロディ
が散りばめられています。
(タイトルからしてそうですが。)

ただ、この作品だけは、かなり作風が違って見えると
思います。

最後に、いかなる展開があろうとも、フィクションには
違いないので、多めに見てもらえると助かります。

それでは、番外編・その2の始まりです。
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第1話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 7:00
宇宙移民船団パイオニア2。
巨大な旗艦の周りを、大小様々な船が取り囲む様に
航行している。
そして、その中に「戦乙女(ヴァルキリー)」という
名の小型艇が居た。
小型と言っても、300Mはあろうか。パイオニア2の
旗艦が大き過ぎるだけで、決してその船が小さい訳では
無かった。
なお、その見せかけに騙されてはいけない。なりは小さい
が、攻撃力と防御力は、そこらの軍の戦艦以上であった。
その船は、「タークス」と呼ばれる組織のものであり、
組織の手によって、秘かに強化されているのだ。

さて、なぜこの船がこんな所に居るのかと言うと、
パイオニア2内で、タークス本部があったブロックが
この度閉鎖される事になり、その引っ越しの為である。
この船の中には、タークスの全組織構成員が乗り込んで
おり、無論リーダーの「サムス・アラン」の姿もあった。
ブロックを引っ越すだけなら、何も宇宙船を使う必要が
無いと思われそうなものだが、問題はパイオニア2の、
構造上の欠陥にあった。
閉鎖されたブロックから、タークスの引っ越し先の
ブロックまでは、船内を通じて移動する事が不可能なの
だった。
その為、一度船の外に出ないと、その目的のブロックに
は行けないのである。

もっとも、例え行けたとしても、結果は同じであった。
タークスの本部から持ち出す物資の量が、原因だった。
宇宙船を使用しないと、とても運び切れる量では無い。

裏の組織タークス。だが、裏の組織と言っても、良く
ある「悪の秘密結社」などではなく、実は、

「隠れたボランティア・グループ」

というのが本当である。
タークスというのは、実は隠れて人助けをする組織
なのであった。
人助けをすると言う事は、裏を返すと、世の悪人共の恨み
を買っているという事である。
その為、タークスのメンバーはもとより、リーダーの
サムスには、いつも大なり小なり危険がつきまとって
いる。

さて、そのサムスは、今「戦乙女号」のブリッジにその
姿を見せていた。艦長席の椅子に座っているレイマールが
その人であった。
そして、その傍らには、彼女のボディーガードとして、
「ウルフ」と呼ばれる長身のハニュエールが、寄り添う様
に立っている。

「引っ越しが、こんなに面倒だとは思わなかったわ。」

サムスがぼやく。

「仕方ないよ。」

ウルフが口を開く。彼女は、見かけは大変美人なのだが、
口を開くと、実はアネゴなのであった。

「目的のブロックには、あとどれくらいで到着予定なの
かしら?クルツ。」
「そうですね・・・。ええと、移動先までは4ブロック
離れていますので、もうちょっとかかりそうですね。」

クルツと呼ばれたフォニュームが、自分の席の端末を
見ながら答える。

「もっと速度上げられないのかしら?」
「無理です。今でも制限速度ぎりぎり一杯なんです。」

サムスは残念そうに、椅子に深く腰掛け直した。
その時、ブリッジ内に、突如警告音が鳴り響いた。

「どうしたの?」
「救難信号です。ええと・・・『賊に襲われている。救助
求む』。以上。」
「賊?場所はどの辺なの?」
「遠くないです。この近くの小惑星地帯ですね。」
「どうする?」

ウルフが尋ねる。が、サムスの答えはすでに決まってる。

「当然、助けに行くわよ。」
「そう言うと思ってた。」
「クルツ、最大戦速よ!並びに全艦戦闘準備!」
「了解です。」

サムスの命令の元、戦乙女号は方向を代え、救難信号の
出先の空域へと向かう。

だが、これがこの先タークスの運命を変える行動だとは、
この時まだ誰も思わなかった。


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第1話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第2話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 8:25
戦乙女号が、救難信号の発信元と思われる空域に到着
すると、商船らしい船が、賊と思われる武装船に攻撃を
受けている所であった。

「あの船に回線をつないで!」

サムスの命令で、クルツが襲われている船にコールする。

「心配ない、こちらはタークス所属『戦乙女』。貴艦を
救助に来た。繰り返す、こちらはタークス・・・。」

ややあって、襲われている船から返事があった。

「救援を心より感謝する。本船には全く戦闘能力は無し。
援護求む。」
「了解した。これより貴艦を援護する。」

サムスの指示により、商船は、賊の攻撃から逃れる為に、
戦乙女の後ろへ回り込み、戦乙女は、シールドを全開に
して、賊の攻撃を食い止める。
だが、いきなり艦に衝撃が走り、ブリッジが揺れる。

「一体どうしたの?」

サムスがクルツに聞く。

「モニターを!」

クルツの操作で、ブリッジのモニターに後方の画面が
写る。
戦乙女の後方カメラは、後ろの商船の外壁に、マンホール
の蓋(ふた)状にせり上がった砲台を映し出していた。

「どういう事?」

サムスがつぶやく。
その時、通信が入った。

「サムス、通信です。発信元は・・・、あの船です!」
「つないでちょうだい。」

サムスの命令により、回線がつながる。

「フッフッフ、タークスの諸君。」
「あなたは、誰?」
「いちいち名乗る必要もないが、『ブラックペーパー』
とだけ、言っておこうか。」
「ブラックペーパー・・・。」

ブラックペーパーとは、知る人ぞ知る、パイオニア2内で
暗躍する闇組織であった。タークスとは対象的に非合法
の裏組織であり、武器から麻薬、人身売買までこなす、
文字通りの死の商人であった。

「そのブラックペーパーが、何の用かしら?」
「ふっふっふ、知れた事よ。あんたらタークスが邪魔
なのさ。」
「それにしても、こんなやり方、スマートじゃないわね。
さすがはブラックペーパーね。」
「お誉めに預かり恐悦至極だよ。だが、もうすぐ死ぬ人間
に誉められてもつまらん。」
「それはどうかしらね。」
「ふん、ほざけ。3対1で勝てると思うのか。」

そう言うと、相手は一方的に通信を切ると、戦乙女を
3方向から囲み、猛烈な攻撃を浴びせて来た。

「すごい攻撃です。このままでは、シールドの耐久力が
持ちません。」

クルツが言う。

「あちらさんも、火力を強化しているみたいね。」

サムスがそう言うと、考え込んだ。

「旗艦はどれかしら?」
「後ろの船です。」
「そう・・・、やはりね。」

サムスはそう言うと、少し沈黙した。
だが、やがて思い切った様に口を開く。

「クルツ。全員をブリッジに集めて頂戴。砲座の人間も
全部。」
「了解しました。」

艦内放送により、戦乙女全乗組員がブリッジに集結する。

「みんな、良く聞いて頂戴。今、この船は、少しヤバい
の。」

全員の顔に動揺の色が走る。戦乙女号がヤバい状況に
陥るとは、余程の事だからだ。

「でもね、全く方法が無い訳じゃないのよ。」

サムスは、深く息を吸い込むと、言葉を続けた。

「これから私の言う事を、良く聞いて欲しいの。さもない
と、この船はおしまい、私もあなた達も、宇宙の海の藻屑
と消える事になるわ。」

サムスは言葉を続ける。

「時間が無いの。余計な事は一切省くわ。」
「まず、この船の全てのハンターを集めて、それを2手に
分けるわ。」
「1隊は新鮮組を中心として。もう1隊は切り込み隊と
して、編成する事にするわ。」

サムスは一息入れると、再び話を続けた。

「そして、それぞれ各隊は、艦内2ヶ所のハッチに待機。
合図と共に敵旗艦に突入。それぞれの判断でルートを展開
して、ブリッジを制圧、以上よ。」
「なお、質問は一切受け付けないわ。今すぐ作戦を実行に
移すわよ。」
「レンジャーはハンター隊と一緒に敵艦に乗り込み、各隊
の援護に回って頂戴。」

サムスが言い終えると、ハンターとレンジャーは、全員
何も言わずにブリッジを出て行った。

「フォースは全員がこの艦に残って、進入して来た敵を
全員で迎撃する事。」

攻撃テクニックを使えるフォースを残した事を、意外に
思えるかも知れないが、異常フォトンに覆われた、惑星
ラグオル地表と、通常フォトンが主な宇宙とでは、
テウニックは、レスタなどの回復テクニックも含めて、
一切役に立たない。
テクニックが使えないフォースを、むざむざ突撃部隊に
入れたりはしない。
肉弾戦闘が苦手なフォースを残すのは、当然である。

さて、ブリッジを出たハンター達は、早速サムスに言わ
れた通りに編成を開始した。
1隊は、アミダ丸というヒューマーが指揮する新鮮組。
もう1隊は、アルフリート・ラウド・イルルと言った、
タークスきっての兵(つわもの)で構成された、
「切り込み隊」である。
この切り込み隊には、当然、ミスティ・キット・シオン
と言った、タークス所属のハニュエールも含む。
女性男性の区別は一切無い。何せ、船が沈んだら終わり
なのである。

なお、レンジャー部隊には、カイザー・イングラム、
それにジュディなど、レイマーやレイマールにアンド
ロイドレンジャーなど、全てのレンジャー系職業が集め
られていた。

「テクニックは使えないんだ、全員メイト系の携帯を
忘れるなよ!」
「通信用の携帯端末の準備はいいか〜?忘れたら、それは
自分の命を忘れるのと一緒だぞ!」

誰彼ともなく、お互いに声を掛け合い、決戦の準備は
進んで行く。

「ジュディ、ジュディは居るか?」

ある女の名を呼んで探し求める男が居た、通称カイザーと
呼ばれるレイマーである。

「カイザー、私はここよ〜。」

女が答えた。彼女は、ジュディという名のレイマールだ。

「どうしたの?カイザー。」

ジュディの問いかけに、カイザーを答えず、黙って彼女の
腰に手を回すと抱き寄せた。
ジュディも、それに答えるかの様に、彼の首に手を回す。

「ん・・・。」

一瞬の口づけ。

「俺に黙って逝くなよ。」
「あんたこそ、私の知らない所で、黙ってくたばったり
しないでね。」
「当然だ。」
「じゃあね。」
「じゃあな。」

二人はそのまま自分の隊へと戻る。
その頃、また別の場所では・・・。

「ヴィジョン〜。」
「なあに?」

ラウドと言う名のヒューマーが、ヴィジョンという名の
フォニュエールと会っていた。

「ん〜・・・。」

ラウドがヴィジョンに唇を突き出す。・・・が、

パッチ〜ン。
ラウドの頬が鳴る。

「いってえな、何すんだよ!?」
「うるさい!こんな状況で何考えてるのよ?」
「こんな時だからこそだろ〜?」
「やかましい!その代わり、無事で返って来たら、その時
に、たっぷりしてあげるから!だから・・・。」
「うん。」
「絶対帰っておいでよ。」
「わかった。その言葉忘れるなよ。俺は絶対帰って来る
からな。約束だぜ。」

そう言って走り去るラウドの背中を見ながら、艦内に残さ
れる彼女は、彼が心配でならなかった。

(お願い、必ず帰って来て・・・。)

そう心の中で祈るヴィジョンだった。

短い時間の中にも、様々なドラマガ生れては消えて行く。

「遅かったな。」

ヴィジョンと別れて、急いで帰って来るラウドに、声を
かける男が居た。アルフリートである。

「へっ、ちょっと野暮用をな。」
「どうせまた、彼女の所だろう?」
「さすがだな、その通りさ。」
「フッ、その顔の手形を見たら、誰でも解る。」
「へっへ〜、焼かない焼かない。」
「そんな手形を貰って、言う台詞でもあるまい。」
「へっ、いやよいやよも好きのうち、ってね。」
「別れが済んだのなら、そろそろ行くぞ。」
「オッケー。」

そんないつもの様に軽口を言い合いながら、アルフリート
とラウドは、切り込み隊に合流した。

その頃ブリッジ周辺では、戦乙女内から、ありったけの
机やら椅子やらを集めて、ブリッジへ通じる全ての通路
に、バリケードを構築していた。
そして、その後ろに残されたフォース達が、それぞれ
手にハンドガンなどの武器を携え、待機していた。
主だった戦闘員が居なくなった今、艦を守るのは、彼ら
だけだったからだ。
そして、運命のラッパは、今多くの者の運命を巻き込み
ながら、高らかに吹き鳴らされようとしていた。


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第2話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第3話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 9:16
その頃、ブリッジではサムスが、オペレーターのクルツ
と、そのサポート役のおりんさんに向かって、矢の様な
指示を飛ばしていた。

「全火器管制システムをラウドの端末に集中。」
「了解、全火器管制システムをラウドに回します。」
「主砲及び副砲、自動照準システムオン。」
「了解、主砲及び副砲、自動照準システムオン。」
「レーダー連動射撃装置オン」
「了解、レーダー連動射撃装置オン。」

砲座からすら、誰も居なくなった現在の戦乙女では、
攻撃を自動化しない事には、艦隊戦は出来ないのだった。

「現在のシールドの状況は?」
「シールド展開率、99・9%」
「全面異常無し。」
「解ったわ。」

サムスは報告を受けると、言った。

「いよいよ始めるわよ。」

こうして、タークスの反撃作戦が始まった。

「180度回頭!目標、敵旗艦。最大戦速、突撃!!」
「了解。」

戦乙女は、シールドを展開したまま向きを変えると、
真後ろの敵旗艦に突撃した。
残念ながら、シールドを展開したままでは、攻撃をする事
は不可能なのだ。もっとも、同じ事が敵にも言える訳では
あるが。だから、現在敵艦はシールドを展開していない。
だが、攻撃する為には、こちらもシールドを解除しなくて
はならず、それでは解除した瞬間に、敵の攻撃をまともに
浴びてしまう。

「残りの2艦の攻撃の威力は?」
「旗艦ほどではありません。」
「1回だけ耐えればいい!前面にシールドを集中!」
「了解。前面シールドにエネルギー集中!両側面及び
後方シールド、出力40%にダウン!」
「敵旗艦に接舷と同時に、左右の敵艦に集中砲火!」
「了解!」
「間もなく接舷します!」
「全員何かにつかまれ!」

前面にシールドエネルギー集めて、戦乙女は敵旗艦に
突っ込んだ。
すさまじい衝撃が両艦を揺さぶり、戦乙女のシールドの
直撃を受けた敵旗艦の装甲がめくり上がり、その一部が
吹き飛ぶ。

「全シールドの解除と共に、攻撃開始!」
「了解」
「先に撃たせろ!シールドで耐えた後、反撃!」
「了解。敵砲撃、来ます!」

戦乙女は、40%に縮小したシールドで、辛うじて敵の
砲撃に耐えた。

「シールド解除!」
「了解、解除します。」
「同時に主砲副砲、全発射!!目標、左右の敵艦!!」
「了解、発射します!」

戦乙女の、全砲門が火を吹く。左右の敵艦は、攻撃の隙を
突かれた上に、旗艦が邪魔になり攻撃が出来ない。
無抵抗のまま、あえなく戦乙女の攻撃の餌食になる。

「左右の敵艦の撃沈を確認!」
「了解。ハッチ開け!タークス切り込み隊、全員突撃!」

サムスの号令の元、戦乙女のハッチが開き、それぞれ待機
していた切り込み隊が、敵旗艦にとりついていく。

「対空レーザー砲台、切り込み隊の援護をせよ!」
「了解!敵艦のハッチ及び、対空兵器を破壊します。」

戦乙女の対空レーザー砲が、敵旗艦の対空兵器を、先手を
打って破壊する。
それと同時に、侵入口となる、敵艦のハッチも破壊する。
破壊された敵艦のハッチに、新鮮組と切り込み隊の双方が
突入を開始する。

「それでは、私も突入に参加して来ます。」

おりんさんがそう言うと、ブリッジを出て行く。
おりんさんは、ヒューキャシールなので、本来最初から
切り込み隊に入っているのだが、クルツのサポート役と
して、ブリッジに残っていたのだった。

「解ったわ、頑張って。」

サムスが言う。

「クルツ、艦内全警備カメラに注意して。こっちが接舷
した以上、あちらさんからも来るわよ。」
「了解です。」
「それと、艦内全マイクをこちらに回して。」
「解りました。」

サムスはそう言うと、艦内放送のマイクに向かって話し
始めた。

「反撃作戦は始まったわ。今、艦内に残っているのは、
おそらくフォースの人だけだと思うわ。今、敵が侵入して
来たら、あなた達しか、この船を守れる人は居ないの。」

そこで一旦サムスは話しを止め、一呼吸後、再び話しを
続けた。

「でも、決して無理をして欲しくないの。あなた達は
フォース。決して武器を持った戦いは得意じゃないはず。
駄目だと思ったら、艦内で、なるだけ丈夫で敵の侵入を
防げる所に逃げて頂戴。決して無理しちゃ駄目よ。」

サムスはそう言うと、マイクを置いた。
だが、その頃、艦内待機のフォースが、一人足りない事
に気づく者は、誰も居なかった。


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第3話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第4話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 10:13
戦乙女が敵艦2隻を葬った頃、敵旗艦内部では、2手に
別れた部隊が、壮絶な戦いを繰り広げていた。

「こちら新鮮組。敵艦ブリッジへのルート上に、敵部隊
出現、交戦中。敵は多数の飛び道具で攻撃してくる。
もっか苦戦中。」
「了解、レンジャー隊の一部をそっちに回す。健闘を
祈る!」
「了解、感謝する!」

新鮮組の援護に、カイザーとイングラムが応援として
回された。

「レンジャー隊、到着だ。」
「おお、待ってたぞ。宜しく頼む。」
「了解シマした。」

カイザーは、ジャスティーというライフルを、イングラム
はコンバットというマシンガンを持っている。

「私ガ弾幕ヲ張リまス。」
「解った。」

そういうと、イングラムは、アンドロイドの特権である、
優れた防御力を逝かし、前に出るとコンバットを乱射
する。
当たるかどうかは問題ではない、圧倒的な弾幕により、
敵の視界をふさぐのが目的である。
乱れた敵を、カイザーがピンポイントで狙い撃ちにする。
敵の反撃の色が薄れた所で、新鮮組が突撃、ルートの確保
に成功する。

「協力、感謝する。」

新鮮組の一人が、感謝の意を述べる。

「大した事ではない。それより、一刻も早いブリッジの
占拠を優先するのが先だな。」
「解っている。それではあなた方も、お気をつけて。」

そういうと、その男は仲間と去って行った。

「イングラム、大丈夫か?」

カイザーは、盾となったイングラムを気遣う。

「大丈夫デす。装甲ノ17%ヲ損傷シたに過ギまセん。」
「そうか。よし、本隊に戻るぞ。」
「了解デす。」

さて、その頃、敵艦内に潜入した、突入メンバー以外の
人間が居た。フォニュエールのミオだ。
彼女は、艦内待機をしていたが、居ても立ってもいられ
なくなり、誰にも内緒で、こっそり敵艦内に侵入して来た
のだ。

「来たはいいけど、思いっきり迷っちゃったよお・・・。
ここどこ〜?」

ミオは、オドオドしながら、敵艦内をさ迷っていた。
だが、その時運悪く、敵の見回りと、はち合わせて
しまった。

「き、貴様!タークスだな!」
「きゃあ〜!こ、来ないで〜!」

彼女は素早くテクニックを唱える。

「フォイエ!ゾンデ!ラフォイエ〜!!」

だが、何も起きない。

「馬鹿が!」
「しまった〜!」

敵の兵士が斬りかかってくる。

「女子供でも容赦はせん、あきらめろ!」

敵兵の持つ武器の刃が、ミオに迫る。

「いやあああ〜!!」

ガッキ〜ン!!

ミオに迫った刃が、彼女の鼻先で受け止められる。

「な、なに!?」

敵の刃を受け止めた武器の持ち主は、そのまま手に力を
込めて、敵兵を武器ごと弾き飛ばし、返す刃で仕留める。
その動きには、全く無駄が無い。

「大丈夫か?」

男がミオに声をかける。

「まったく。艦に残っていないからだ。」
「あ、ありがとう。アルフ・・・。」

男はアルフリートだった。
切り込み隊のルートを調べる斥候に出た所、たまたま
ミオを見つけたのだ。

「ここは危険だ。1人誰か付けるから、お前はそいつと
艦に戻れ。」
「・・・わかった。ありがとうね、アルフリート。」

本隊に戻ったアルフリートは、イルルを呼ぶと、ミオを
送る様に言った。

敵旗艦に切り込み部隊が突入してから少し、戦乙女にも
敵の兵士が侵入して来ていた。

戦乙女には、現在フォースしか残っておらず、数では
優勢だったが、やはりハンターを主とする敵兵相手には
分が悪く、ハンドガンなどで遠間から反撃しつつの後退
を、余儀無くされていた。
数と戦力で考えると、結果的にほぼ互角だが、1個人を
見た場合、その戦闘能力の違いから、その犠牲はどうし
ても多くなってしまう。

ミオを送って戦乙女に戻って来たイルルは、倒れている
味方の数に息を飲んだ。

「こ、これは・・・。」

敵と味方が、ほぼ1:3の割合で、あちこちに倒れて
いる。
断然味方の犠牲の方が多かった。

「まさか、もうブリッジまで・・・?」

イルルはそう思うと、ミオに、安全な所に隠れている様に
言うと、ブリッジ目掛けて走り出した。

途中、何度か侵入した敵兵と刃を交え、斬り倒しながら
ブリッジへ続く通路にたどりついた。
幸い、イルルが戦った相手は、彼より弱かった。
だが、その理由が明らかになるのは、それからすぐの事
であった。

「ぎゃあ〜!!」
「・・・!!」

突然、誰かの悲鳴が聞こえ、イルルはそっちの方へ走る
向きを変えた。
イルルが悲鳴のした方へ行くと、そこにはおびただしい
数の死体が転がっていた。そして・・・。

「お、お前は・・・!!」

そこに居たのは、ヒューキャストだった。手には巨大な
カマ状の武器を持っている。
紛れもなく、ブラックペーパーの始末屋「黒い猟犬・
キリーク」だった。

「な、なんでこんな奴がここに・・・!?」

イルルは目の前に居るのが、ブラックペーパーの
暗殺者「黒い猟犬・キリーク」だと知って、足の震えが
止まらなかった。
今までイルルが倒した相手が、あまり強くなかった理由
が、これで解った。
だが、その答えは、イルルにとって、絶望的なもので
あった。

「ここはフォースしか居なくて、退屈だったぞ。」

キリークは、イルルの方へ向き直ると言った。

「ようやく、まともなハンターが居たものだ。」
「あっ、あっ・・・。」

あまりの出来事に、イルルは、口さえまともに聞けな
かった。
今の自分では、間違い無くやられる!

「少しは楽しませてくれるか。」

キリークは、カマを構えながら、ゆっくりとイルルに
近づいてくる。
まさに、蛇に睨まれた蛙だった。イルルは、恐ろしさの
余り、1歩も動く事が出来なかった。
そして、そんなイルルの口から、嗚咽(おえつ)にも似た
叫びが絞り出される。

「た、隊長〜!!」


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第4話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第5話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 11:02
「ん?」

その時、ウルフは誰かに呼ばれた様な気がした。
彼女はサムスの護衛の為に、ブリッジに残っていた。
と、同時に艦内に居る、たった一人のハンターであった。

気になったウルフは、警備用カメラのコントロール端末
とモニターで、艦内のチェックを始めた。
すると、

「!!・・・イルル!!」

モニターの中の1台が、キリークを相手に、絶望的な戦い
をするイルルを映し出したのだ。

「あの馬鹿、なぜここに?」

だが、考えるよりも先に、ウルフはブリッジを飛び出して
行った。

「でやあ!でやあ!!」

その頃イルルは、必死に自分の武器を振るい、目の前の
強敵「黒い猟犬・キリーク」と戦っていた。
だが、キリークの圧倒敵な強さに、全く歯が立たないで
いた。

「どうした?そんなものか?」

キリークは、まるで師匠が弟子に稽古を付けるかの様に
イルルの相手をしていた。
イルルは、タークスでも、さ程弱い方ではない。だが、
キリークとは、その格が違い過ぎた。

「クハハハハ!」

キリークが、高笑いと共に、大ガマを振るう。
すさまじい猛攻で、イルルは防戦一方になる。

「うっ・・・。」

このままでは勝てない。イルルは絶望敵な気持ちになって
いた。
このまま、このカマにかかって、自分も足元に転がる死体
の仲間入りをするのだろうか・・・。
そんな時、

「イルル!」

イルルは、誰かがキリークの背中側から、自分を呼ぶのを
聞いた。

「隊長!!」

その声の主は、自分が先程、無意識の中で呼んだウルフ
だった。

「どうしてこんな所に?まあ、それはいい。そんな事
よりも、だ。」

ウルフは、イルルを追い詰めているキリークを睨む。

「こいつを何とかしないと・・・。」

キリークは完全に手加減していた。イルルを殺そうと
思えばすぐ出来たのだが、わざといたぶって楽しんで
いたのだ。
イルルの体には、キリークのカマによって出来た、
無数の切り傷があり、そこかしこから赤い血が流れ出
ていた。

「イルル、お前はもう十分やった。艦内のどこかで少し
休んでろ。」
「ですが、隊長。」
「その体で何が出来る?今また敵艦内に行った所で、
そのままでは切り込み隊にも参加出来まい。」
「う・・・。」
「大丈夫だ。私なら大丈夫。」
「隊長・・・。」

イルルは、ウルフの言葉に従う事にした。とりあえず
医務室にでも行って、体の治療をしなければなるまい。

「黒い猟犬・キリーク・・・。今度は私が相手だ。」
「ほう・・・。」

キリークは、イルルに背を向けて、今度はウルフに
向き直った。
すでにイルルは向かって来ないと、完全に解っている
らしかった。

「お前は、どこかで・・・。」
「ああ、そうさ。アタイがまだ、駆け出しの新米の
時さ。一度だけあんたと一緒に仕事をしたよ。」
「お前、あの時の・・・。そうか・・・。」

キリークは、再び「クハハハハ!」と笑った。
だがその笑いは、明らかに嬉しそうだった。

「そうか、俺はお前に見込みがあると言った。確かに、
お前は大物になると私は踏んだからだ。だが・・・。」

キりークは、一旦言葉を切ると、再びウルフに話し始め
る。

「まさか、タークスに入るとはな。そして、こうして
俺と戦う事になるとは。」
「アタイはあんたに感謝してたさ。その時、あんたから
色々な事を学んだ。ハンターとして、その先やって行く
為に、生き抜く為に必要な事をね。だけど・・・。」
「それはアタイがあんたの正体を知らなかったからだ。
まさか、ブラックペーパーの始末屋だったとはね。」
「ふむ。俺はお前の成長次第では、後にお前も俺の組織に
迎え入れるつもりでいた。だが、まさか正反対の組織、
タークスに入るとはな。」
「アタイは、少なくとも、あんたに恩義は感じていたさ。
アタイがここまでになったのも、アンタのおかげが少なか
らずあるからさ。」
「もし、もっと以前にあんたに誘われてたら、ひょっと
したら、アタイはタークスじゃなく、そっちに入ってた
かも知れない。」
「今からでも遅くはないぞ。こっちに来ないか?俺の後を
継いで、かなりの腕の殺し屋になれる。殺し屋が嫌なら、
お前なら望めばすぐにでも幹部になれるぞ。いや、それ
以上になれるかもな。」
「あいにくだけど、お断りよ。今のアタイには、守る物が
出来ちまったのさ。」
「サムス・アランか。下らん、あいつが、あの女が一体
お前に何をしてくれた?何を与えてくれたと言うのだ?
俺達は違うぞ。お前が望むなら、金でも地位でも、欲しい
物は何でもくれてやる。」
「所詮機械のアンタには、解らない事、理解出来ない事
だろうさ。でも、今のアタイには、それが解るのさ。
だから、その為にアンタを倒さないとならない。」
「フッ、戯(たわ)言を。そこまで言うなら、お前が言う
俺には解らない物、自分が信じた物の為に、死ねい!」

そこまで言うと、キリークは手に持った大ガマで、ウルフ
に襲いかかって来た。イルルの時とは違う、明らかに本気
である。
ウルフとキリークの死闘が、今幕を開ける。


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第5話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第6話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 20:55
その頃、イルルは傷付いた体を引きずる様にして、
辛うじて艦内の医務室へとたどり着いた。だが、医務室
の扉はロックされていた。イルルは、タークス共通の
パスコード「7372」を使い、中へと入る。

「!?」

中は真っ暗だった。明かりの電源は落とされていて、何も
見えない。
イルルは手探りでスイッチを探すと、彼の手に、何か柔ら
かい物が触れる。

「いやあああ〜!!」

その途端、スイッチが入り、室内が明かりで満たされる。
イルルが触ったのは、リューネという、1人のフォマール
の肩だった。

「ああ、驚かせてすまん。俺だ、イルルだよ。」

イルルがそう言って辺りを見回すと、戦乙女の生き残りが
精一杯の武装をして、彼をとり囲んでいた。

「イルル!」

誰かがイルルを呼んだ。

「ミオ、ここに居たのか。」
「うん。」

ミオは彼と別れた後、生き残った仲間と一緒に、隠れて
いたのだった。
医務室は、レントゲンなどの放射能を出す機器を使う為、
他の部屋とは違い、出入口は頑丈で機密性が高くされて
いる。立てこもるには、うってつけの場所だった。

「さて、ちょっとこっぴどくやられちまったんでね、治療
させてくれないかな?」

イルルはそう言うと、寝台に横になった。自動化された
医療機器が、天井から降りてくる。

「あのう、イルル。」
「うん?」

イルルが首を曲げて見ると、ヴィジョンが立っていた。

「ラウドは無事なの?」
「いや、それが・・・。」

イルルは途中からミオを送る為に本隊を抜けたので、解ら
なかった。

「そう・・・。」
「なあに、心配ないって。ラウドはいつも頼れる男と
一緒だし。」
「アルフリート?そうね、彼と一緒なら大丈夫よね。」
「さてっと。」

治療が終わったイルルは、ベッドから飛び起きると、
立ち上がった。

「治療も済んだし、俺は行かないと。」
「どこへ?もし良かったら、このままここに居て、私達を
守ってくれない?」

リューネが言ったが、

「俺には、やらなきゃならない事があるんでね。」

イルルはそう言うと、片目をつぶって医務室を後にした。

「ごめんなさい、私の為に。」

ミオがヴィジョンに謝った。

「いいのよ。」

ヴィジョンはそう言ったが、ラウドの事が、やはり心配
であった。


その頃、ウルフは全力でキリークに挑んでいた。
キリークも、一切の手加減を抜きでウルフと戦う。

「俺は嬉しいぞ。自分が見込んだ人間が、よもやここまで
の使い手になろうとはな。」
「あんたがブラックペーパーなのが残念だよ。」

ウルフとキリークは、文字通り火花を散らして戦った。
タークスの「狼」と、ブラックペーパーの「猟犬」、2人
は命を賭けて戦っていたが、だがそれでいて、どこか
キリークは楽しそうだった。

「クハハハハ!俺は楽しいぞ!お前は俺をこんなにも
楽しませる存在に成長した!俺は満足だ!だが・・・。」
「俺を倒すには、まだ成長が足りなかった様だな。」

キリークはそう言うと、カマを振る腕のパワーを上げた。

「ぐっ・・・。」

パワーアップしたキリークの攻撃に、ウルフは思わず後退
する。
さすがの彼女も、キリークとの格の違いを認めない訳には
いかなかった。
だが、今キリークと戦えるまでの使い手は、ウルフだけ
だった。
彼女が負ければ、もう後がない。
だが、そんな時、さらに絶望的な通信が入る。

「こちら新鮮組・アミダ丸。とんでもない事になった。」
「こちら切り込み隊・アルフリートだ、どうした?」
「黒い猟犬・キリークだ、あいつが居やがる。」
「そうか、実は俺の目の前にも居るんだがな。」
「なんだと?どういう事だ?」

当然この通信は、携帯端末を持つウルフの耳にも入って
いた。

「・・・どういう事?」

ウルフの問いかけに、キリークが答える。

「知りたいか?ならば教えてやろう。・・・あれは俺の
コピーだ。」
「コピー?」
「そうだ。別のヒューキャストのボディーを使用して、
その頭脳に、俺の戦闘パターン・プログラムを組み込んだ
のだ。」
「ただし、自立型ではない。おそらくブリッジから操作
してるのだろう、ただの操り人形に過ぎん。奴とまとも
に戦う事はおすすめ出来んな。やるならまず、ブリッジ
からのコントロール電波を遮断する必要がある。」
「・・・どうしてそんな事を私に?」
「気に入らんからだ。」
「え!?」
「この俺に黙って、勝手に俺のコピーの出来損ないなど
作るのが、気に入らんからだ!」
「黒い猟犬は、キリークは、この俺だけだ!まがい物の
存在など必要ない!!」

ブラックペーパーの始末屋と恐れられるヒューキャスト、
キリーク。だが、アンドロイドの彼にも、例え殺し屋で
あっても、プライドや誇りは存在するのだ。意外な事に、
敵の弱点を教える原因となったのは、その彼のプライドで
あった。

何とかして、今の情報をみんなに伝えねば。そして、
キリークのコピーを倒す方法を考えないと・・・。
だが、ウルフはキリークとの戦闘で手一杯であり、とても
そんな事は無理であった。

大事な情報を持ちながら、その事を仲間に伝えられない。
ウルフはくやしい気持ちでキリークと戦っていた。


「宇宙に咲く華、散りゆく華」第6話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第7話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 21:58
「隊長〜!」

キリークと死闘を続けるウルフのもとに、治療を終えた
イルルが走って来た。

「イルル、なぜ戻って来た?」
「なぜって、聞かれるまでも無いし、答える必要も無いっ
しょ?」
「ふっ、仕方が無い奴だ。」
「隊長、完全復活した俺が、加勢するっス。」
「いや、イルル。それよりもだ。」

ウルフはイルルに、キリークが教えてくれた情報を話し、
ブリッジへ行って、クルツに対策を練る様に話す様に
言った。

「隊長、解ったっス!」
「よし、解ったら行け!」

イルルは戦いを繰り広げるウルフとキリークの脇を抜け、
ブリッジへと飛び込んだ。

「イルル!」
「話は後っス!」

イルルは、クルツにウルフの言葉を伝えた。
クルツは、すぐに端末に向かい、操作を始める。
恐ろしい速さでクルツがキーを叩くたびに、モニターの中
の数値や文字が、すさまじい速度で流れ、変化して行く。
彼の能力もまた、素晴らしいものであった。パイオニア2
で、天才と呼ばれるモンタギュー博士と比べても、決して
見劣りはしないレベルだろう。

「よし、出来た!」

クルツはそう言うと、別の端末を操作して、何かカプセル
の様なものを作った。大きさは野球のボールくらいか。

「時間が無いから、ぎりぎり2個しか出来なくて。」
「何っスか、これは?」
「簡単に言うと、このカプセルには、コピーキリークの
コントロール電波を妨害する働きをする物質が入ってる
んだ。これをコピーキリークに使うと、完全じゃ無いに
しても、動きを抑える事が出来る。」
「解ったっス。」
「こちらから新鮮組と切り込み隊には連絡しておく。君に
は、そのカプセルを双方に届けて欲しい。」
「了解したッス。命に代えても届けて見せるっス。」
「イルル、本当に死んじゃ駄目よ。」

サムスが言った。

「大丈夫、俺は龍神イルル・ヤンカシュっす。」

イルルはそう言うと、休む間も無くブリッジを飛び出す。
イルルは、来た時とは別のルートで敵艦に向かった。
もし、ウルフが倒されていたら、そんな場面は見たく
無かった。それに、ウルフが負けた相手に、今、自分が
戦いを挑む訳には行かなかった。

(隊長、死なないで下さいよ。)

イルルはそう思いながら、カプセルを抱えて全力で疾走
していた。

「こちらクルツ。聞こえるか?みんな。」
「こちら新鮮組、アミダ丸、聞こえるぞ。」
「同じく切り込み隊、アルフリートだ。」
「細かい事は抜きで説明する・・・。」

クルツは携帯用端末を通して、仲間に情報を伝える。

「今、対コピーキリーク用のアイテムを持って、イルルが
そっちに向かっている。」
「了解。切り込み隊の方は、途中までラウドを取りに行か
せる。」
「こちらアミダ丸、了解だ。」
「それまで持ってくれ。死ぬんじゃないぞ、みんな。」
「了解!!」×2

早速ラウドが戦列を離れて、イルルを迎えに行く。

「イルル、こっちだ!」
「ラウド!」

イルルは、クルツに聞いた簡単な説明を、ラウドにも
する。

「頑張れよ。」
「おう!」
「ラウド。」
「何だ?」
「ヴィジョンが心配してたぞ、必ず帰って来い!」
「お、おう・・・。」
「んじゃな。」

イルルはそう言うと、新鮮組の居る方へ向かった。

「イルル、馬鹿野郎・・・。」
「これで、絶対死ねなくなったじゃねえかよ・・・。」

ラウドはそうつぶやくと、アルフリート達の元へと
走り出した。


コピーと言えども、キリークは強敵だった。
さすがのアルフリートも、防戦一方に追いやられている。

(このままでは、いかんな。)

アルフリートはそう思った。だが、そう思いつつも、自分
が今までこの様な強敵に出会えなかった事を、少し不幸
にも思うのだった。
その時、

「アルフリート!」

アルフリートの後ろから、誰かが彼の名を叫んだ。
ラウドだった。

「避けろ!」

ラウドはそう言うと、今イルルから受け取ったカプセル
を、コピーキリーク目掛けて投げつけた。
アルフリートは、ひらりと身をかわし、ラウドの手から
放たれたカプセルは、コピーキリークに命中した。
カプセルは、コピーキリークの頭部に当たると、風船の様
に弾ぜて、中の金色の液体をばらまく。
その瞬間、コピーキリークの動きがぎこちなくなる。

「よし、命中だぜ!」

ラウドが言った。
その隙を見逃さず、アルフリートがコピーキリークに
斬りかかる。
だが、それでもなお、コピーキリークの動きは、アルフ
リートと、ほぼ互角であった。
ラウドがアルフリートを援護すべく突進する。が、

「!!ラウド、無茶だ!」
「うわあ〜!!」

血飛沫が舞い、ラウドの体が地面に転がる。

「ラウド!!うおお〜!!」

アルフリートは、怒りに任せてコピーキリークに斬り
かかった。
その姿は、いつものアルフリートでは無かった。


その頃、新鮮組も、コピーキリークに苦戦を強いられて
いた。
タークスきっての使い手、新鮮組隊長アミダ丸も、コピー
キリークに手を焼いていた。

(この俺が、ここまで追い込まれるとは・・・。)

コピーとは言え、こちらのキリークも手強かった。
新鮮組の中にもかなりの被害が出ていた。

(イルルはまだなのか・・・。)

アミダ丸は、イルルの到着を今や遅しと待っていた。


   「宇宙に咲く華、散りゆく華」第7話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第8話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/23(Mon) 22:28
ウルフとキリークの死闘は、いつ果てるともなく続いて
いた。

ウルフのドラゴンスレイヤーと、キリークの大鎌が、
フォトンの火花を散らす。

だが、このままではウルフに勝ち目は、まず無かった。

(一体どうすれば、この化け物を倒せるんだ?)

相手は、まさに戦う為だけに生まれて来たヒューキャスト
だ。
しかも、戦闘を重ね、経験を蓄積している。

(こいつが他の奴とは違う所・・・。)

ウルフは1つだけ策があった。

(いくら強いといっても、こいつは機械。頭の中は電子
頭脳、つまりコンピューター。)

ウルフは、追い詰められながらも、徐々に頭の中で計算を
組み立てていく。そして、

(やってみるか。)

ウルフは、わざと上段に振りかぶり、腹部をがら空きに
する。

「いちかばちかの大振りか。そんな攻撃が、この俺に効く
と思うのか。」

キリークは、正確にウルフのがら空きになった腹部を狙い
攻撃してくる。
もちろん、それはウルフの計算の内だった。

ウルフは、振り上げた武器を降ろすと、さらに踏み込み
間合いを詰める。そして、

「む!?」

キリークが唸る。ウルフは、間合いを詰めて、鎌の刃の
部分より元の方、鎌の柄の部分を脇腹で受け止めたのだ。
そして、

「うおりゃあ〜!」

鎌の柄を離すと同時に、捨て身で斬りかかった。

「むお!?」

キリークも、すかさず応戦する。

ガッキィ〜ン!!

2つの影が交錯する。そして・・・、

ガシャンッ

キリークの鎌を持つ腕とは反対側の腕が、肩口から床に
落ちる。

「ククク、見事だ。」

キリークが含み笑いをする。

「俺が機械だという事を、逆手に取った、見事な作戦
だった。」
「機械というのは、意外性に弱いからね。そこにアタイの
付け入る隙があったのさ。」
「全く見事なものだ。」

キリークはそう言うと、再び「クハハハハ!」と笑った。

「今日の所は引き上げておく。だが、これで勝ったと
思わない事だ。私の機能を完全に止めないと、お前の
勝ちにはならんぞ。」
「解ってるさ。」
「今日の勝負は預けておく。また会おう、さらばだ。」

そう言うと、キリークは通路を出口へと戻って行く。
そして、彼が独自で乗って来た小型艇に乗り込むと、
いずこかへ去って行った。

ウルフは、しばらくその場にたたずんで、彼が残して
行った、彼の片腕を見ていたが、やがてブリッジへと
帰って行った。
彼女が守る者が待つ、ブリッジへと。


「宇宙に咲く華、散りゆく華」第8話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第9話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/24(Tue) 6:18
キリークより奥に入り込んだ敵兵は無く、ウルフは無事に
ブリッジへと帰り着いた。

「ただいま〜。」
「おかえりなさい。」

ブリッジには、最早サムスとクルツしか残ってなく、今
敵が来たらウルフしか戦う者は居ない。
他のメンバーは無事だろうか。敵旗艦に切り込んだ連中は
どうなっているだろうか。

「ウルフ、ご苦労様だったわね。」
「いえ。」

サムスはブリッジのモニターで、ウルフの戦いぶりを
ずっと見てたのである。

「座ったらどう?」
「いえ、仕事ですから。」

サムスは、ウルフに椅子に座る様に勧めたが、ウルフは
いつもの定位置ーーサムスの横ーーに立った。
だが、それも束の間だった。
突如響く警告音。

「どうしたの?」
「侵入者です。1人の様ですが・・・。」

サムスの問にクルツが答える。

「まずいわね・・・。」

1人で乗り込んで来るという事は、余程腕に自信がある者
に違い無かった。

「クルツ、もういいわ。あなたも避難しなさい。」
「サムスは?」
「馬鹿ね。私はここを離れる訳にはいかないのよ。」
「・・・解りました。」

クルツはそう言うと、秘密の隠し通路を使い、ブリッジを
後にした。
戦乙女には、こうした隠し通路がいくつかあり、緊急の
場合には、タークス共通コードで使用が可能なのだ。

やがて、クルツが退避してからしばらくのち、ブリッジ
に人影が現れた。
それは褐色の肌をしたハニュエールで、名前を「スゥ」と
言う。
彼女もまた、ブラックペーパーの幹部である。

「あんたは・・・!」
「ウルフ君だっけ・・・。最悪な再会になったわね。」

ウルフは以前彼女と偶然組んで仕事をした事があり、以後
も何度か彼女に出会っていた。

「だから、ブラックペーパーについて、色々嗅ぎ回るのは
およしなさいと言ったのよ。」

彼女はウルフと会うたびに、警告をして来た。それはスゥ
本人が、ブラックペーパーの幹部だと、ウルフが知ってか
らも同じであった。(彼女が、なぜウルフに親切に警告を
繰り返すのかは不明であったが。)

「あたしはね、君がブラックペーパーの事に首を突っ込む
様になってから、いつかはこうなる気がしてたのよ。」
「でも、以外と早くにその日が来たわね。」

スゥはため息混じりにそう言うと、腰のホルダーから
ダガーの柄を外すと、スイッチを入れた。
ヴン、という音がして、フォトンが湾曲した刃を形成
する。

「出来ればこういう結末だけは避けたかったけど。あなた
もタークスな上に、ターゲットを消すのに障害になる様な
ので。これも仕事よ、悪く思わないでね・・・。」
「よもやアタイも、逃げも隠れもしないよ。こうなった事
は、結果的に残念だけどね。」

ウルフはそう言うと、サムスに向き直り、彼女の顎に手を
かけると、強引に引き寄せた。そして・・・、

「・・・!」

瞬間的に唇を合わせる。
いきなりの行為に、サムスの目が驚きに見開かれる。
だが、その間にウルフは、サムスの手の中に、赤い箱を
滑り込ませていた。

「女が女を好きになっちゃ、いけないかい?」

そう言いながら、サムスに目配せをすると、スゥの方へ
向かった。心の中で、

(さようなら・・・。)

とつぶやきながら。

キリークと戦い、なおかつスゥと戦い勝利する事は、残念
ながら今のウルフには不可能だった。
スゥとウルフの実力差というのは、そんなに違わない。
だが、キリークと戦った疲労が、ウルフに不利な状況を
作り出していた。

「おやおや、そっちの気があったのかしら?」
「さあ、どうだかね。」

ウルフはスゥの戯言に戯言で返しながら、愛用のドラゴン
スレイヤーではなく、別の武器を取り出した。

「シノワビートブレード」

シノワビートと呼ばれる、ロボット型エネミーの腕を
加工して作られた武器。
攻撃力よりも、敵を一撃で仕留める特殊能力の方が
有名な武器である。

ウルフには考えがあった。

スゥはダガー系の武器に関しては、右に出る者が居ない
程熟練した使い手だ。
自分のドラゴンスレイヤーは、間合いが広いが大振り
なので、そのスキにたやすくスゥの接近を許してしまう。
懐に入られたら負けである。
だが、同じダガー系で、スゥに勝てるとも思えない。
シノワビートブレードは、かすってでも、当たりさえ
したら、相手を即死させる事が出来る。
それを利用して、スゥにプレッシャーを与えるのだ。

白と黒、タークスの「アネゴ」とブラックペーパーの
「アネゴ」、2人のハニュエールは、お互いに、同じ
系統の武器を構え、睨み合った。

スゥとウルフ、得意テクニックも同じ「ギゾンデ」で
あり、2人は偶然であるが、似過ぎていた。
その似過ぎた部分が、スゥにウルフへの親近感を沸かせ、
必要以上に親切に警告した理由なのではないだろうか。

テクニックが使えない以上、雌雄を決するのは、そのまま
実力である。
だが、現在の状況は、明らかにウルフに不利であった。

サムスは、睨み合って動かない2人を見ながら、無意識に
唇に手をあてていた。
そして、ウルフが渡した赤い箱の中身を確認すべく、もう
片方の手で、そのスイッチを押していた。


  「宇宙に咲く華、散りゆく華」第9話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第10話
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/24(Tue) 6:55
ラウドは、ふと気が付き、目を開けた。

(俺はどうなったんだ・・・?)

起き上がろうとするが、体に力が入らない。
辛うじて壁に手をつき、立ち上がろうとする。

(ヴィジョン・・・。)

ふと、頭の中に、一人の女性の顔が浮かんで来た。

(俺は、また死ぬ訳にはいかない・・・。)

だが、足がふらふらともつれ、前につんのめる。
そんな倒れそうな彼の体を、横から出た手が支える。

「アルフリート!」

名前を呼ばれた男は、黙って微笑む。

「無茶しやがって。」
「すまねえ。」

だが、そんなアルフリートの腕にも、血がいく筋か滴って
いる。
そして、その代償とも言うべき結果が、床に転がって
いた。
コピーキリークの残骸である。
アルフリートは、弱体化したコピーキリークを、何とか
仕留めていたのだった。

「お前・・・。」
「回復薬は、お前に全部使っちまった。全く、厄介な
腐れ縁だぜ。」

アルフリートは、致命傷を受けたラウドに、手持ちの全て
の回復薬を使ったのだ。

「だったら俺のを・・・。」
「無駄だ。お前の分はとっくに無い。」

その時、2人の前に人影が現れる。

「くっ、敵か?」

アルフリートが身構える。
だが、今の状況で2人に敵と戦う力は少ない。
しかし、その人影は、2人を見ると笑ってこう言った。

「手を貸そうか?お2人さん。」


その頃、ウルフとスゥは、激しい剣劇を繰り広げていた。
だが、手数で勝るスゥが、ウルフを徐々にではあるが押し
ていった。
ウルフは考えていた。

残念ながら、今の自分では、スゥに勝つ事は不可能だ。
でも、負ける訳には行かなかった。
自分が負ければ、もうサムスを、戦乙女を守る者は、誰も
居なくなってしまう。
勝ちも負けもない以上、残された選択は「引き分け」しか
ない。

「ウルフ!」

その時、死闘を繰り広げる2人の背後から、声がした。
2人が同時に振り替えると、サムスが武器を構えていた。

「ギルティ・ライト」

フォトンランチャーの上級武器である、大型のバズーカ。
サムスがウルフからこれを手渡された時、スゥからは
ウルフが邪魔になって、見えなかったのだ。

そして、動きが止まったスゥに、ウルフは自分の武器を
捨て、つかみかかる。

「な、なにを!?」

一種の隙を突かれ、スゥは驚く。
ウルフはスゥを羽交い締めにして、その動きを封じる。
だが、当然この状態ではウルフも攻撃出来ない。

「くそ、離せ!」

スゥはウルフの呪縛から、何とか逃れようと、滅茶苦茶
にもがく。
ウルフは、絶対に離すまいと、必死に耐える。
その間にも、サムスはギルティ・ライトの発射体制に
入っていた。

「チェックメイトよ。祈りなさい!」

サムスは引き金を引き、強大なエネルギーがスゥを襲う。
そのあまりの威力に、2人のハニュエールは、それぞれ
吹き飛ぶ。

「ウルフ!」

サムスがウルフの元へ駆け寄る。
が、うつ伏せに倒れたウルフの下から、血が染みの様に
広がっていく。
スゥが、ウルフから逃れる為に、ダガーを何回かウルフ
の体に突き立てていたのだ。

ガシャン

サムスの手から、ギルティ・ライトが滑り落ちる。

その時通信が入った。

「こちら新鮮組隊長アミダ丸。敵旗艦のブリッジの占拠
に成功。繰り返す・・・。」


「宇宙に咲く華、散りゆく華」第10話 了
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「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」第11話(最終話)
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/24(Tue) 7:32
血溜まりに沈むウルフを、呆然と見つめるサムス。
だが、その時、倒れていたスゥが起き上がる。

「!!」

サムスはあわてて落とした武器を拾って構えるが、

「無駄よ。あたしには、もう戦う気は無いわ。」

そういったスゥの脇腹からも、大量の出血が見られる。

「今回は、あたしの負け。いえ、『あたし達の負け』
かしらね。」

そう言うとスゥは、出口へ向かって、体を引きずり
ながら去って行った。


その頃、敵旗艦からは、生き残った突入部隊が引き上げ
始めていた。

カイザーとジュディもその中に居た。
負傷したカイザーをいたわる様に、ジュディが支えながら
歩いている。
イングラムは、負傷者を何人か、肩に乗せたり抱えたり
している。外部の装甲は所々痛んでいたが、内部は無事
らしかった。

アルフリートとラウドは、彼らの真ん中に居る男に、
それぞれ肩を貸してもらって歩いていた。
イルルである。
イルルは、アルフリートとラウドの真ん中で、2人を
支える様にして歩いている。
アルフリートの腕の怪我は、イルルが持っていた薬で
治療してある。
出血による体力の消耗が激しい為、2人はイルルに肩を
貸りて歩いているのだった。

イルル達は、真っ先に戦乙女のブリッジに戻った。
だが、そこで見たものは、倒れているウルフだった。

「隊長・・・、死んじゃったんッスか?」

イルルが泣きそうな声で言った。
その時サムスが顔を上げた。

「いえ、まだ死んではいないわ。」
「じゃあ、助かるんッスか?」

泣きそうだったイルルの顔に、少しばかり希望の光が
差す。

「助かるんじゃない、助けるのよ。」

サムスはそう言うと、イルルに、ウルフを抱えてついて
来る様に言った。

「こっちよ・・・。」

サムスは、今までメンバーが誰も入らなかった様な隠し
通路を、次々と通って行く。
イルル以外の他のメンバーも、その後に続く。
そして、

「ここよ。」

サムスが示したのは、恐ろしく厳重にロックされている、
何か巨大な扉だった。

「イルル、ウルフを私に。」

サムスはイルルからウルフを受け取ると、自分しか知る事
のないパスコードを入力して、扉の中へと入った。
他のメンバーが入ろうとすると、すでにオートロックが
かかっていた。
ここは、サムスしか知らない部屋、サムスしか入る事が
許されない部屋であった。

サムスはウルフを抱きかかえたまま、何かの装置の前に
立っていた。

その装置は、直径が1・5m、高さが3mほどの円筒形で
あり、ガラスかアクリルのような、透明な物質で出来て
いて、その内部は、緑がかった透明の液体で満たされて
いた。

実はこれが、タークスが引っ越す時に、宇宙船が必要な
理由だったのである。

サムスは、ホースがついた、ウルフの顔を半分覆う様な
マスクを付けると、ウルフをその装置に沈めていった。
装置の中では、マニュピレーターなどが動き、ウルフの
体を支えている。

これは、タークスが究極の人助けの為に所持している装置
であった(ただし試作段階だが。)
究極の人助け、それは

「蘇生」

である。ただし、生きた人間のクローン化は禁止されて
いるし、「ムーンアトマイザー」などの使用とは違う。
この装置は、

「人体の復元」

を可能にする装置なのである。

例えば、ガンなどで内臓を切り取った人や、事故などで
手足を失った人をこの装置に入れると、失った体の部分
を復元する事が出来るのだ。

大切な人や体の一部を失う悲しみや苦しみ、それらの事
から人々を助けるという、究極の人助け、それが
タークスの最終目標である。
(ただし、老衰などの自然死は、当然駄目だが。)

サムスは、この装置を使い、ウルフを助けるつもりなの
である。

(死なせやしない、絶対にね。だってあなたは・・・。)

サムスは装置を操作しながら思った。

(私の唇を最初に奪ったんですもの。この代償は高くつく
わよ・・・。例えあなたが女でもね・・・。)


  「宇宙に咲く華、散りゆく華」第11話 了

  「宇宙(そら)に咲く華、散りゆく華」完結
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エピローグ
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/24(Tue) 7:51
ブラックペーパーとの死闘から後、タークスは引っ越し
を済ませると、新しい環境で仕事にかかった。
ブラックペーパーとの戦いで、タークスは優秀な人材を、
かなり失った。
だが、ブラックペーパーの損害も甚大であった。
しばらくの間、主だった活動は出来ないだろう。

この戦闘の事は、政府内で内々のうちに、秘かに処理され
て、一般に露見する事は無かったという。

なお、噂に寄ると、ある科学者だか研究者やらが数名、
黒い猟犬の手にかかったという話しだった。

そんな折り、タークス社内・・・。

「あら、お茶が切れちゃったわ。」

サムスはそう言うと、傍らに立つ人物に、お茶の葉を
買って来る様に言った。

「ついでにお茶受けも何か欲しいわね。」

その人物は、「はいはい。」と返事をすると、社長室を
出て行った。

(まだまだこんなもんじゃないわよ。あの代償は、一生
かけても払ってもらうわよん。)

その後ろ姿を見送りながら、サムスはにんまりと微笑む
のであった。


         エピローグ 了
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後書き
ウルフ [HomePage] [Mail]
12/24(Tue) 8:07
たった一言・・・。

「地平線の果てまで、走って逃げたい(爆」

シリアスもいいけど、今全部読み返して見ると、

「顔から火が出そうです。」

そして、

「出てなかった人、ごめんなさい。」

あと、イルルを少しひいきし過ぎたかな?と。
アルフリートは、かっこ良く書いたつもりですし、
ラウドも今回はおちゃらけ無しでした。
おりんさんの話しによると、

「ヴィジョンのキャラは、こんなじゃない。」

って事でしたが、取材不足でした。
ジュディとカイザーも、夫婦で出演願いましたが、
以外と出番が無かったので、面目ない次第です。
ジジちゃん、出すの忘れてごめんよ〜。
ミオとアミダ丸、勝手に出してごめんね。怒らないで
おくれね。
リューネちゃん、ほんのチョイ役でした。
クルツ氏は、やっぱり端末いじるキャラがいいかなと。
おりんさんも「FAM」で出てもらいましたが、本当の
メインキャラは違うのかな?

NPCのキリークとスゥは、文句言わんから、いいやろ
(おい

色々出し過ぎたので、コメントに入っていない人、
ごめんなさい。

あと、名前だけ出した人も、勝手に使ってすいません。

それと、小説内の設定、フォトンの関係でテクニックが
使えないだとかは、私が都合上、勝手に作りました。

あと、やっぱりウルフがおいし過ぎるかなと(汗

最後に

「サムスの唇奪った事は、サムス本人に、ちゃ〜んと
許可受けてます。」

キャラが女同士なので、多めに見て下せえ(アセアセ

あんまり細かい解説するとつまらんと、おりんさんに
言われたので(笑)とりあえず、この辺で。

やっぱり顔から火が出そうで、地平線の果てまで走って
逃げたいなあ(自爆
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毎回
Gum [Mail]
12/25(Wed) 4:32

楽しく読ませて頂いてます。

テクニックが使えない等の設定は
ウルフさんの小説内だから良いと思います。

私の小説内では思いっきり使っていますが(^^;;

それから、サムスの切り札、蘇生用のバイオタンクは
私の小説にも出てくるんですよ。

参りました。先に使われてしまうとは(^^;;;;

でも、それでも、私は使います。
と言うか、今更書き換え不可なので。

シリアスも中々良いと思いますよ。

これからも頑張ってくださいね。

ちなみに私は31日までPC使えませんので
レスを頂いても、見れるのは31日過ぎてからになります。

それでは〜\(^^
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ふふ
Shion [Mail]
1/17(Fri) 15:38
今回も楽しく読ませていただきました。
ポロリがあるかも、といっていたのはこの話ではなかったのですねw
脱がされてなくてよかった(ほ)
名前だけでも出していただいちゃって、とても光栄です。

批評タイム
なんかエピローグがとても気にいってしまいました。
ああいう終わり方をするとやっぱりほっとしますね。
もちょっと戦闘シーンを会話だけでなく、文がほしかったな、
なんて素人のくせに言ってみたりする。ごめんなさいw

次回作も楽しみにしてますよ。
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